(第11回)患者・家族と医療の間で
看護師が担う新たな役割
--高谷先生は、家族コンコーダンスを実現するための看護師の役割を、どのようにお考えでしょうか。
高谷 患者を含む家族と医療職者のコンコーダンスは、「患者を含む家族内のコンコーダンス」と、「医療職者内のコンコーダンス」双方に支えられていると考えています。看護師には、それぞれのコンコーダンスを実現するために、異なる役割が求められます。
看護実習をする高谷氏
初めに、患者の家族内のコンコーダンスを実現するためには、患者のライフステージに基づき、患者自身とその家族の治療に対する関わりを正しく理解することが必要です。例えば患者が乳幼児の場合、自宅での治療管理のほぼ100%が患者の家族に委ねられます。一方、患者が学童児の場合、生活の拠点が学校へシフトし、治療管理は患者自身が取り組むことが増え、家族が直接関わる割合は減少します。
◇看護師という「資源」
このように、たとえ同じ疾患であっても、患者のライフステージにより、治療管理に患者自身が取り組むのか、家族が取り組むのかは異なるとともに、時間の経過によっても変化していきます。看護師としては、患者を含む家族の状況を正しく理解した上で、患者および家族それぞれに対して、的確な指導や情報を提供することで、家族内のコミュニケーションが促され、患者の家族内のコンコーダンス実現につながります。専門的知識を持った看護師という「資源」を、患者やその家族に有効に使っていただける関係の構築が重要であると考えています。
次に医療職者内のコンコーダンスを実現するためには、看護師は、患者およびその家族のウェルビーイングな状態とは何かを考え、彼らの生活の支援者として、治療のファシリテーターとしての役割があると考えています。
◇価値観の衝突
例えば、在宅医療の領域においては、多職種の連携が求められ、それぞれの価値観が衝突することがあります。医師は身体への影響を意識しますが、ホームヘルパーは生活への影響を意識します。このような状況において、看護師が患者およびその家族の価値観を正しく理解した上で、治療に関わる医療職者間の価値観の衝突を調整し合意形成に導く役割を担うことが、医療職者内のコンコーダンス実現につながります。
(2018/12/01 06:00)