教えて!けいゆう先生

よくあるがんの誤解とは?
医師がしばしば経験する三つのこと

 ◇がんは「治る」病気?

 がんの診断を受けた方からは必ず「治りますか」「がんは治らないんですよね」といった言葉を聞きます。「治る」「治らない」という言葉を定義することは、特にがんを扱う時は難しいと感じます。前述の通り、がんという病気をひとくくりにできないことも要因の一つですが、それ以上に、どういう状態になれば「治る」と呼ぶべきか、という問題もあるからです。

 たとえば、大腸がんにかかって手術を受けたとしても、それで治療は終わりではありません。がんが切除され、肉眼で確認できる病気は体からなくなっていたとしても、再発しないかどうか、慎重に経過観察が必要です。長期間、定期的に病院に通う必要がありますし、進行度によっては、再発予防のための抗がん剤治療が必要になることもあります。

 ◇がんは長い間付き合う病気

 もし手術してから3年後に肝臓に転移が見つかったらどうでしょう。条件を満たせば、手術を受け、この転移を切除することが可能かもしれません。しかしそこから先、やはり通院、検査は続くでしょう。そう考えると、どの段階で「治る」と呼ぶべきかが分からなくなってしまいます。そこで私は、「治る」「治らない」という言葉を使って説明するのは避けています。

 「〇〇という進行度であれば、△カ月に1回、□年間通院が必要です。もし再発が見つかれば、再発の種類によって治療法を考えます。たとえば…」

 というように、一つ一つ、数字を使って具体的な情報をお伝えします。特に進行したがんの方であれば、「長いお付き合いが必要な病気です。まずは手術が治療の第1段階です」というような説明をすることもあります。基本的にはどんながんであっても、比較的長い期間付き合っていくべき病気だ、という認識が必要だと思っています。

  • 1
  • 2

教えて!けいゆう先生