教えて!けいゆう先生

よくあるがんの誤解とは?
医師がしばしば経験する三つのこと

 がんだという診断を受けると、多くの方は大きなショックを受けます。わが国で最も多くの人の命を奪っている、広く知られた疾患であるだけに、「怖い病気だ」というイメージが強いのだと思います。しかし、どんな病気でもそうですが、「怖い」「治らない」といった漠然とした言葉で恐れるのは得策ではありません。がんに関して誤解しがちなポイントを、私の経験とともに説明してみます。

怖れていながらよく知らない「がん」への誤解とは?

 ◇がんは多くの病気の総称

 テレビやインターネットでは、「がんの予防法」や「がんを治す方法」といった言葉をよく見ます。普段がんを扱う私たち医師にとっては、こうした「がん」という言葉の使い方には強い違和感を覚えます。「がん」とは一つの病気ではなく、全く異なる多くの病気の総称だからです。同じ消化器領域であっても、たとえば胃がん、大腸がん、膵がん、肝臓がんなどは、原因も治療も予後も、何もかもが違います。

 膀胱がん、子宮がんなど、領域が異なればさらに性質は違いますし、同じ「がん」として総称されることの多い、血液の悪性腫瘍や脳腫瘍、骨、筋肉の悪性腫瘍などは、同じジャンルに含めるには違和感があるほど異なる病気です。よって「がんを予防する」「がんを治す」というと、「どのがんの予防や治療のことを述べようとしているのか」という疑問が浮かびます。全く異なる病気の予防法や治療法が同じであるはずがないからです。

 「けがの予防法」「けがを治す方法」と言われたら、「どの部位のどんなけがのことなのか」という疑問がわくでしょう。それと似た感覚です。

 ◇「がん」だけを恐れる

 何かの症状で病院に来られた患者さんからよく聞かれる言葉に、「がんではないでしょうか」があります。がんにかかった著名人に関する報道や、がんに関するテレビ番組の影響も大きいのでしょう。がんが最も恐れるべき、忌み嫌われるべき存在として印象付けられていると感じます。確かに、がん(悪性新生物)は、わが国で毎年最も多くの人の命を奪っている病気です。

 しかし、がんと同じくらい、あるいはそれ以上に注意しなくてはならない病気はたくさんあります。たとえば、わが国で多い死因として悪性新生物の次に続くのは心疾患、その次は脳血管疾患です。これらの大きなリスクになるのは、糖尿病や高血圧、脂質異常症(高コレステロール血症など)のような生活習慣病や、喫煙、肥満などの因子です。こうした病気を恐れ、予防、早期治療することも、当然ながら大切です。

 「がんではないか」と恐れて来院した方に、「がんの心配はありませんよ。でも血圧が高く、コレステロール値も高いです。こちらの治療をまず始めましょう」とお伝えすることはよくあります。がんと同じくらい、あるいはそれ以上に怖い病気の存在を忘れてはなりません。

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