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「不治の病」ではなくなった白血病
タイプによって治療に難易度

 再発のリスクや寛解に至れるかどうかの可能性は、造血器腫瘍の遺伝子異常タイプで左右される。「比較的再発しにくい『予後良好群』、再発する確率が高い『予後不良群』、両者の間の『予後中間群』に分けられる。予後良好群は抗がん薬治療で完治を目指すが、予後中間群の患者には、重い合併症が起きる可能性の目安になるHLA(白血球の型)が一致したドナーがいれば骨髄移植を選択する場合がある。予後不良群の場合は、ドナーを探さずにできる臍帯(さいたい)血移植なども検討しなければならないだろう」

患者を支えるのは身近な看護師=東京慈恵会医科大学病院提供

患者を支えるのは身近な看護師=東京慈恵会医科大学病院提供

 この骨髄移植は、移植を行う時の患者の状態が寛解かどうかで成功率に大きな差が生じてしまい、非寛解の状態では条件が厳しくなる。それでも多くの白血病患者は前向きに闘病を続けているという。「抗がん薬の副作用や治療が成功するどうか、不安はあるのだろうが、患者は医師が驚くほど前向きに治療に向き合っている。これは看護師や家族らが頑張って患者を支えていることも大きい。 その意味で、周囲のメンタル面での支援は重要だ」

 ◇無理しない治療を

 治療がうまくいっても抗がん薬治療や移植が体に与えるダメージは小さくない。また、抗がん薬治療だけで寛解を維持できた患者が通常の社会生活に復帰するためには、治療後長期のリハビリも必要になる。

 矢野教授は池江選手に向けて「治療中に衰えた筋力や持久力をアスリートとして取り戻すにはより長期間、急激な体力負荷を掛けず、医師と相談しながら適切な方法でトレーニングすることが必要だ。周囲はそれを理解し、無理はさせずに長期的な視野で応援してほしい」とアドバイスしている。


【用語説明】 骨髄(造血幹細胞)移植

「ファイザーHP「がんを学ぶ」より

「ファイザーHP「がんを学ぶ」より

 白血病で正常な機能を失った骨髄などの造血機能を回復させるため、造血機能を持つ骨髄などにある造血幹細胞を移植する治療手段。重要な合併症で移植した細胞の免疫機能が患者の体を攻撃してしまう「GVHD反応」が起きる可能性の目安になるHLA(白血球の血液型)が一致した血縁親族または骨髄バンクのドナーからの移植が望ましいが、患者側の状況に寄っては新生児のへその緒から採取した臍帯血もなどを移植も選択される。
 手順としては正常な造血細胞ごと強力な抗がん薬や放射線により白血病細胞を根絶させる。これにより造血機能だけではく、免疫力もほぼ完全に失われ、他の臓器などにもダメージが及ぶことがある。移植した造血幹細胞が患者の体内に定着・増殖する過程で、造血機能や免疫力は回復するが、一定期間はGVHD反応を防ぐための免疫抑制剤の投与のほか、輸血療法や感染症に対する治療が必要になる。
(喜多壮太郎・鈴木豊)

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