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結節性硬化症は、脳や腎臓、心臓、肺、皮膚など全身の臓器に良性腫瘍などの病変ができ、それに伴い、腎臓からの出血やけいれん発作、発達障害などの症状が表れる遺伝性の希少疾患だ。東京大学大学院医学系研究科(東京都文京区)国際保健学専攻発達医科学分野の水口雅教授に、発症原因や治療法、その進歩について聞いた。
結節性硬化症で表れる腫瘍やそれに伴う症状
▽個人差大きい症状の表れ方
結節性硬化症の国内患者数は約1万5000人と推計される。「mTOR(エムトール)」というタンパク質の働きを制御する遺伝子が機能しなくなると、細胞を増殖させるmTORが過剰に働き、全身に良性腫瘍を形成する。良性腫瘍は発生した臓器でのみゆっくりと増殖し、がんに比べれば生命に及ぼす危険は少ないが、臓器の働きを損なうためさまざまな症状が表れる。
年齢によって表れやすい特徴的な症状があるが、成人後も症状がほとんど出ない人もいれば、幼少期から表れる場合もあり、個人差が大きい。
近年は、妊娠中の超音波検査により胎児の段階で診断される例も増えているという。水口教授は「胎児期や新生児期は心横紋筋腫、小児期にはてんかんや発達障害、脳腫瘍が起こる頻度が高い。小児期から皮膚腫瘍、青年期以降は腎臓や肺に腫瘍ができることが多い。それにより、腎機能障害や出血、不整脈、心不全、けいれん発作などの合併症が表れます。そのため複数の診療科が連携して検査、治療する必要があります」と話す。
▽薬物治療で腫瘍縮小が可能に
この病気は完治が難しく、手術や放射線療法で腫瘍を取り除く、小さくする、症状を抑えるなどの対症療法が行われる。2012年以降、mTOR阻害薬(エベロリムス、シロリムス)という分子標的薬が保険適用となり、手術や放射線治療をせずに、脳や腎臓、肺の腫瘍の縮小を目指すことが可能になった。
水口教授は「治療を行う時期を見逃さないためには、患者さんの年齢に応じて、当面どの症状の出現に気を付け、どのような検査を受けるべきかを医師から聞き、確認しておくことが必要です」とアドバイスする。
専門施設と専門医を知るには日本結節性硬化症学会のホームページを参照したい。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
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