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高齢の患者が多く、がんが進行した状態で見つかることが多いなどの理由から、死亡者数が増加している膵(すい)がん。近年、早期発見法の研究が進み、新たな抗がん剤が治療の選択肢に加わるなど、克服に向けた取り組みも進んでいる。国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)肝胆膵内科の奥坂拓志科長に、膵がんの最新動向を聞いた。
膵がん発症の危険因子
▽早期発見が治癒のカギに
膵がんは、2017年に約4万人が発症し、約3万4000人が死亡したと推計される。
治癒を目指すには早期発見と手術が重要だが、患者のうち早期のステージ1で見つかるのは10%前後にとどまる。膵臓は胃の裏側にあり、しかも周囲に他の臓器があるため、検査や観察がしにくいことが、その理由として挙げられる。また、表れる症状が腹痛、黄疸(おうだん)、背中の痛みなど、他の病気でも見られるものであることや、無症状の場合が多いことも早期発見を難しくしている。奥坂科長は「約7割は手術ができない状態で見つかります」と話す。
そのため、膵がんの簡便な早期発見法の研究が進んでいる。候補の一つが、血液中のあるタンパク質(ApoA2アイソフォーム)で、早期の膵がん患者で減少が見られる。国立がん研究センターでは、この物質が早期発見に役立つかどうかを検証中で、19年には結果が得られる見通しだ。
一方、膵臓の内部にあるのう胞(液がたまった袋)や糖尿病、慢性膵炎など、膵がんの発症に関わる因子も分かってきている。奥坂科長は「心当たりのある人は、膵臓の専門医を受診し、精密検査を受けてほしい」とアドバイスする。
▽薬で腫瘍が縮小、手術可能に
手ごわいがんだが、治療薬の進歩は著しい。この5年間に、2種類または4種類の抗がん剤を併用する治療法が導入され、手術ができないほど進行した膵がんに用いられている。「がんが膵臓周囲の血管に接しているなどの理由で従来なら手術ができなかった患者の1~2割は、抗がん剤により手術可能な状態まで腫瘍を小さくして、切除できるようになりました。完治を目指せる人も出てきています。がんが比較的大きく、手術をしてもがんがわずかに残ると考えられる場合に、抗がん剤を使用してから手術する例も増えています」
奥坂科長は「以前は考えられなかったほど治療成績が良くなっています。諦めないで、治療に臨んでほしい」とエールを送る。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
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