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前立腺がんは5年生存率が97.5%と、比較的経過の良いがんとして知られる。だが進行してがんが骨や他の臓器に転移してしまうと、根治が望めなくなる。そうした中、転移のリスクの高い人に投与することで転移なく生存できる期間を延ばす新薬が、今年保険適用になった。新たな治療について専門家に聞いた。
▽転移リスクの高い人に投与
前立腺がんは、男性ホルモンであるアンドロゲンの刺激によって増殖するがんだ。治療法には、手術、放射線療法、ホルモン療法などがある。このうち、ホルモン療法は、精巣でのアンドロゲン分泌を抑えて去勢状態とする方法で、主に手術や放射線療法が適さない患者に行われる。
しかし、「がん細胞の増殖をホルモン療法で抑えられても、患者の6~7割には次第に効かなくなり、がんが再び増殖する『去勢抵抗性』となります」と横浜市立大学付属市民総合医療センター(横浜市南区)泌尿器・腎移植科の上村博司部長は解説する。
転移がない段階で去勢抵抗性(非転移性去勢抵抗性前立腺がん)になると、骨など前立腺から離れた臓器に転移(転移性去勢抵抗性前立腺がん)するリスクが増す。骨転移を来すと、腰に痛みを生じたり、骨折しやすくなったりして生活の質が低下するほか、抗がん剤など強い副作用のある治療法が必要になる。
▽生存期間の延長に期待
2019年5月にアパルタミドという新しいホルモン療法薬が発売された。臨床試験において、転移リスクの高い非転移性去勢抵抗性前立腺がん患者にこの薬を飲んでもらうと、偽薬を飲んだ人に比べて、転移がなく生存できる期間を約2年延ばすことができた。同じ系統のエンザルタミドでも、同様の効果が確認されている。
いずれもアンドロゲンによる増殖刺激を妨げ、がん細胞の増殖を阻害する薬だ。上村部長によると、副作用として、アパルタミドでは疲労や皮膚の発疹が多く、骨折や転倒、まれにけいれん発作が起こることがある。一方、エンザルタミドでは高血圧や疲労のほか、まれにけいれん発作が出現する。
転移リスクの高い人は、前立腺がんの勢いを示すPSAという血液検査値により見分けられるという。上村部長は「リスクの高い人に新たな薬物治療を行い、転移を遅らせることができれば、生活の質の維持や生存期間の延長が期待できます」と話す。(メディカルトリビューン=時事)
(2019/11/02 08:00)
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