治療・予防 2024/12/27 05:00
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頭蓋骨は、脳を上から包み込む頭蓋(とうがい)冠と、脳の底を支える頭蓋底に分けられる。この頭蓋底に発生した腫瘍は、下垂体腺腫、転移性腫瘍といった種類にかかわらず、すべて頭蓋底腫瘍と呼ばれる。大阪市立大学医学部付属病院(大阪市)脳神経外科の後藤剛夫准教授は「脳腫瘍がどこに発生したかで、手術の難易度は大きく異なります。頭蓋冠であれば脳神経や太い動脈がないため手術は比較的容易ですが、頭蓋底だとそうはいきません」と話す。
治療法によって切除可能な範囲に違いがある
▽手の届かなかった場所
頭蓋底は神経や血管、下垂体、脳幹など極めて重要な組織が密集している場所だ。そのため頭蓋底腫瘍は、悪性はもちろん、良性であっても摘出手術が治療の基本となる。
「良性腫瘍は成長がゆっくりで、周囲組織への広がりや転移はありませんが、頭蓋底にあれば重要な神経や血管を圧迫し、頭痛やめまい、顔面まひ、視力の低下、物が二重に見える、物が飲み込みにくい、手足が動かしにくいなどの神経症状を引き起こすからです」と後藤准教授。
だが、手術は重要な神経や血管を傷つけ、神経まひや出血などの合併症を引き起こすリスクが高いため極めて難しい。何より、頭蓋底は脳をすべて取り外した状態でなければ観察できないため、腫瘍はそもそも見えない。後藤准教授は「1980年ごろまでは、手の付けられない場所にある腫瘍とされ、治療が不可能でした」と明かす。
▽術式開発で切除率向上
脳外科医らが試行錯誤を重ね、ようやく90年前後から、目や耳の横の骨を削るなどして側面から頭蓋底にアプローチして腫瘍を切除する開頭頭蓋底手術が試みられるようになった。さらに2010年ごろからは、開頭頭蓋底手術では到達が難しかった頭蓋底中心部に発生した腫瘍に対して鼻から内視鏡を挿入して鼻の奥にあるトルコ鞍(あん)底骨を削り、腫瘍に到達する経鼻内視鏡手術が行われ始めた。しかしこの方法でも、内視鏡で見えているのに腫瘍の外側に手術機器を到達させられず切除できない腫瘍があった。
そこで後藤准教授らが開発したのが、トルコ鞍底骨だけでなく、両側の後床(こうしょう)突起という骨を削除して、見える範囲と手術機器が到達できる範囲を飛躍的に拡大した新しい経鼻内視鏡手術だ。これにより頭蓋底腫瘍の多くを安全に切除することが可能になったという。
後藤准教授は「頭蓋底腫瘍は、手術ですべて摘出できれば完治が期待できます。大きくなるほど手術は難しくなるので、神経症状があれば早めに脳神経外科や神経内科を受診し、頭蓋底腫瘍が疑われれば専門施設で最適な手術を受けてください」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)
(2019/11/28 07:00)
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