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つらく長引く腰の痛みは、日常生活の質(QOL)の低下につながりやすい。外出を控えたり、日常の活動を制約されたりすることで、将来的には筋力の低下や活動量の減少から要介護状態になる可能性を高める恐れがある。厚生労働省によると、要介護・要支援の状態になった人の4分の1近くが腰や膝など運動器の障害が原因とされている。この比率は、高齢化社会の進行に比例して増加している。
生活の質に直結する腰痛
◇診察・治療受けない人も
腰痛は、さまざまな原因による。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄(きょうさく)、骨粗しょう症による圧迫骨折などは治療が必要な腰痛だ。一方で腰痛は、椎間板や関節の損傷、変形など加齢による痛み、かがんで仕事を繰り返したり重いものを持ち上げたりたりする作業によるものまで幅広いため、専門医による診察や治療を受けていない人も少なくない。
◇運動療法が大切
「要支援・要介護状態に陥らないためには、運動療法が大切だ。効果が一時的な薬物療法に比べ、効果が持続的な上に症状の改善だけでなく、機能的な回復も期待できる」。金沢大学大学院整形外科学の加藤仁志(さとし)助教はこう話す。
加藤助教が慢性腰痛を重視しているのは、腰などの痛みが筋力低下や膝や腰の動きを制約することで「ロコモティブシンドローム(ロコモ、運動器症候群)」と呼ばれる問題の誘因にもなっているからだ。日本整形外科学会などはロコモにより、日常生活の自立度が低下し、介護を必要な状態になる可能性が高くなる、と警鐘を鳴らしている。
加藤助教は「腰の痛みをかばうことで運動量が減少すれば、ロコモになる条件を満たしてしまう可能性が高くなる」と指摘する。
◇腰部の体幹強化を
加藤助教は対策として、ウオーキングなどの有酸素運動、腰椎周辺や股関節周辺の殿部筋肉のストレッチ、軽い負担を掛ける筋力強化などを勧める。「中でも有効なのが腰部の体幹筋力の強化だ。こう話すと、あおむけになって上半身を上げる腹筋運動と考える人が多いかもしれない。実は、横になっておなかをへこましたり、腹筋をかたくしたりする運動の方が効果はあるだろう」。
膝を立てる形で横になり、息を吐き出しながら腹部をへこます。逆に息を止めて腹部をかたくする。このような負担の少ないトレーニングでも、「継続すれば十分に効果がある」と加藤助教はアドバイスしている。
◇腹部への加圧が効果
ただ、地道な運動は短期間では効果が感じにくいため、継続するのに難しい面もある。特に、高齢者や既に強い痛みを感じている人にとってはつらい。加藤助教は、血圧測定時に腕を取り巻いて圧力をかけるのと同様の仕組みで、腹部に巻いて加圧することで筋力トレーニングになる機器を開発した。65歳以上の慢性腰痛の患者を対象に、理学療法士の指導の下でストレッチと組み合わせて3カ月の運動療法を実施したところ、腹部体幹の筋力や立ち上がる際の機能などが改善し、腰痛は軽くなった、という研究をまとめている。
研究結果も踏まえて、同助教は「痛みや脊柱の変形、筋力低下で自立的な運動療法が難しい高齢者や重い痛みに悩まされている人にとって、弱い圧力に対応することで筋力が強化できることは、治療の継続性などに大きく影響する」と意義を強調している。(喜多壮太郎・鈴木豊)
(2020/03/29 09:00)
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