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動脈硬化などが原因で心臓を取り巻く冠動脈が狭くなり、酸素や栄養を運ぶ血液が一時的にうまく流れず、胸痛発作が起こる狭心症。だが、胸痛があっても冠動脈に異常が見られない人が、更年期を迎えた女性の間に一定数いる。冠動脈の末梢(まっしょう)にある髪の毛ほどの細い血管が一時的に収縮して発作が起こる「微小血管狭心症」と呼ばれる心臓病だ。静風荘病院(埼玉県新座市)女性内科・女性外来の天野恵子医師に聞いた。
更年期女性で発症する微小血管狭心症
▽更年期女性の1割が発症
微小血管狭心症は、生活習慣病による動脈硬化とは関係なく発症する。胸痛は安静時や就寝中に表れることが多く、圧倒的に男性よりも女性、特に閉経前後(更年期)が大半を占める。天野医師が行った調査では、更年期女性の10人に1人の割合で認められたという。
症状は、胸痛のほか、顎や喉、耳の後ろ、背中、肩などに痛みが起こる場合もある。たいていは5分以内に治まり、数カ月に1度くらいの頻度がほとんどだ。
心電図検査を受けても異常がなく、医療者の間でもあまり知られていないため、見過ごされることも珍しくない。原因は女性ホルモンの一つであるエストロゲンの減少にある。「エストロゲンには心臓の血管を保護する作用がありますが、閉経によりその分泌量が急激に減少することで、微小血管の収縮が促進されたり、逆に拡張が不十分になったりする人がいます」と天野医師は説明。心身のストレスや不眠、寒冷が発作を誘発するという。
▽突然死の危険はない
突然死の危険がある一般的な狭心症とは異なり、微小血管狭心症はその心配はない。だが、ほっておくのは危険だ。「微小血管狭心症を治療せず放置しておくと、収縮機能が保たれた心不全(HFpEF=ヘフペフ)を発症する可能性が報告されています。治療が必要です」と天野医師。
微小血管狭心症は、末端の冠動脈に十分な酸素や栄養が一時的に運ばれない状態が積み重なることで、時間をかけて徐々に心筋細胞が壊死(えし)する。心不全につながりかねないため、高血圧症や狭心症で使われるカルシウム拮抗(きっこう)薬という血管を広げる薬を用いて治療する。なお、専門は循環器内科だが、女性に特有の病気であるため、全国に300カ所以上ある女性外来を受診することが勧められるという。 (メディカルトリビューン=時事)
(2020/06/05 08:00)
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