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コロナ患者急増、どう対応するか 
奪われた「第2波」準備時間

 新型コロナウイルス感染症が再び急拡大している。7月に入って東京都の感染確認者が連日のように200人を上回り、小池百合子知事は「感染拡大警戒の状況にある」と言明。首都圏、他の地域でも感染が増加している。インフルエンザと同様に気温や湿度が上昇すればウイルスが不活発になって感染が抑制されるとの予想もあったが、専門家は「(新型コロナが)環境に影響される度合いは予想より低い。『夏になれば(流行が)弱まる』とは言えない。十分な対策が必要」と警鐘を鳴らしている。

新型コロナウイルスの感染を調べるPCR検査

 ◇表に出てきた無症状・軽症

 新型コロナの感染を調べるPCR検査の体制が整い、重症者以外にも拡大すれば、軽症や無症状の若者の感染比率が高まる。

 世界保健機関(WHO)のインフルエンザ政策委員も務める慶応大学の菅谷憲夫客員教授は「特に流行が劇的に拡大したわけではない。患者が増えたというより、これまで検査されなかった軽症、無症状者が表に出て来た。重症者が減っても、この程度の患者はいたと捉えるべきだ」と強調する。

 そうした認識を示す一方で菅谷教授は「東京都だけで1日に100人、200人の新規感染者が出るのは、やはり問題。警戒を呼び掛けるだけでなく、国や自治体が移動制限や業態を限定しての営業規制などの対策に乗り出すしかないのでは…」と語る。

多くの感染確認者が出た東京・池袋の繁華街

 ◇自覚ないまま社会活動

 最後まで症状が出ない無症状のケースに加え、感染から一週間程度たった後に発熱などを訴える患者も多い。こうした患者に関して菅谷教授は「症状が出る前から周囲にウイルスを拡散させる」「軽症・無症状の患者が感染の自覚がないまま社会活動をすれば、感染は拡大してしまう」と指摘。特に無症状の若者は、活動範囲が広いこともあって重症者よりも多くの人に感染させる可能性が高い、と強調する。

 今年3月からの新型コロナ流行で患者が殺到、疲弊した医療現場をこれまでの教訓に基づいて立て直すには一定の時間が必要になる。ウイルスの感染力が強まる秋以降は、患者のさらなる増加が予想されることから、この夏は「第2波」に向けた準備期間と位置づけ、医療体制の再構築やスタッフの休養・再配置、海外との人的交流再開に基づく駐在員帰国などが予定されていた。

 菅谷教授は「問題のウイルスが夏季に感染力を維持することは熱帯、東南アジアや中南米諸国での流行状況から推定できていた」と指摘するものの、この時期の感染拡大で第2波への準備が滞るのは間違いない。

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