2021/03/29 05:00
医師に必要なコミュ力とは
2年間の研修で学んだこと
「食事制限や運動なしに痩せる」「打つだけで痩せる」―。こんなうたい文句で、少なからぬクリニックなどが「GLP-1受容体作動薬」を使ったダイエットの広告を出しています。一度試してみたいと思われた方もいると思います。このダイエットは1日1回、糖尿病治療用の注射薬をおなかに打ち、体重減少を狙うといったもの。しかし、結論から申し上げますと、糖尿病患者さん以外が安易に手を出すべき薬ではありません。当然、医師の処方が必要です。
ちょっと待った!「GLP-1受容体作動薬」は安易に使うと危険です
◇受容体作動薬とは?
GLP-1は私たちの体の中にもともとあるホルモンの一つで、血糖値を下げる働きがあります。この働きを補助するのがGLP-1受容体作動薬で、日本では糖尿病の治療に使われています。食欲を低下させる作用と消化管の運動を抑制する作用もあるため、海外では肥満症治療薬としても承認されています。
「夢のような痩せ薬だ」と思われるかもしれませんが、副作用があります。血糖値が下がりすぎると、低血糖という状態になり、倦怠(けんたい)感や意識消失といった症状が出ます。
◇重篤な副作用
糖尿病薬の中では、比較的低血糖を起こしにくいとされていますが、絶対に低血糖にならないわけではありません。わたし自身、GLP-1ダイエットをされている方が低血糖発作を起こし、意識障害で救急搬送となった例を経験しています。
幸い適切な治療によって意識は回復しましたが、誰にも気づかれない場所で意識を消失し、救急搬送されなかった場合、命を落としていたかもしれません。低血糖は最悪の結果につながりかねない重篤な状態だということを、ご理解いただきたいと思います。
◇安易に飛びつかないで
リスクを考えれば、GLP-1受容体作動薬ダイエットは、食事制限と運動によるベーシックなダイエットに先立って行うべきものではないと言えるでしょう。
しかし、個々の事情があり、どうしても医療のチカラを借りて体重を落としたいという方がいらっしゃいます。そういった方は、糖尿病専門医や肥満症専門医がいるクリニックを受診し、相談してみてください。肥満の診断や治療、そして予防についての知識をしっかり持っている医師と一緒に方針を決めていただければと思います。(研修医・渡邉昂汰)
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