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もともと心臓に問題のなかった女性が、妊娠中や出産後に突然、心機能が低下し、心不全を発症する「周産期心筋症」。少し歩いただけで息切れがする、極度に足や顔がむくむなどの症状が表れる。心当たりのある人は速やかに診察してほしい。
周産期心筋症の主な症状
▽多くは産後1カ月以内
心不全とは血液のポンプとしての心臓の機能が低下し、全身に十分な血液が供給されず、酸欠となる状態。全身に水がたまるため、息切れ、むくみ、体重増加(1週間で500グラムから1キロ以上の増加が続く)、せき(横になると出る)、息苦しさなどが表れる。こうした症状は、正常妊産婦の多くが感じる症状でもあるが、妊娠中または出産後にどんどん悪くなるのが周産期心筋症だ。
国立循環器病研究センター病院(大阪府吹田市)産婦人科部の神谷千津子医長によると、3割が妊娠中、7割が出産後に発症する。出産後の発症は6カ月ぐらいまでに生じるが、ほとんどは1カ月以内だという。
国内の発症頻度は、1.5万人の分娩(ぶんべん)当たり1人だ。35~39歳に限ると、1万人に1人に増える。神谷医長は「高齢(35歳以上)出産のほか、双子、三つ子などの多胎出産、高血圧、切迫早産(妊娠37週未満で出産の兆候が見られる状態)などで薬物治療を受けた人は、周産期心筋症のリスクが高まると考えられます」と説明する。高齢出産が増えている中、今後増加する可能性があるという。
▽重症化して死亡例も
周産期心筋症は一般的な心筋症と異なり、6割の患者が発症から1年以内に正常化する。しかし、3割は心臓の収縮力が元に戻らず、1割は重症化し時に死に至る例もある。「心機能の低下が持続すると、心不全の治療薬を飲み続ける必要があります。慢性化や重症化を避けるには、早期診断・治療が大切です」と神谷医長。
産後の治療は、心不全に対する対症療法が中心だ。近年、母乳の分泌を促すプロラクチンというホルモンが、発症に関与するとの説があり、その働きを抑える薬を使うこともある。妊娠中に心機能が著しく低下した場合、分娩を早めるケースもある。
この病気はまだあまり知られておらず、正常妊娠経過による症状と心不全の症状が似ている上、もともと心臓病のなかった人で起こるため早期発見が難しい。神谷医長は「該当する症状が強い場合は、産科の主治医に相談の上、循環器内科を受診することを勧めます」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
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