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脳の血管が詰まって酸素や栄養が行かなくなり、脳細胞が壊死(えし)する脳梗塞。動脈硬化や心房細動と呼ばれる不整脈などが原因だが、心臓に卵円孔(らんえんこう)という穴(隙間)が開いていることが原因の場合もある。2019年にカテーテルとメッシュ状の形状記憶合金製器具を用いて卵円孔をふさぎ、脳梗塞の再発を防ぐ新たな治療法が承認され、治療の選択肢が広がった。
卵円孔開存
▽脳梗塞の5%
脳梗塞は主に、脳の細い血管が詰まる「ラクナ梗塞」、太い血管が詰まる「アテローム血栓性脳梗塞」、心臓にできた血栓(血の塊)が脳に運ばれて血管が詰まる「心原性脳塞栓症」に分類される。これら3種類で約70%を占める。
それ以外に「心臓の構造が関係するケースがあります」と東京都済生会中央病院(東京都港区)脳神経内科の大木宏一医長は解説する。心臓の右心房と左心房を仕切る間の壁に小さな穴が開いている「卵円孔開存」だ。
卵円孔開存は健常者の4人に1人に認められる。大木医長によると、卵円孔は常に開いているわけではなく、通常は健康上の問題はない。しかし、重い物を持ったり、排便でいきんだりした瞬間に卵円孔が開き、本来の流れとは異なる右心房から左心房への血の流れができることがある。すると、体内のどこかの静脈にできていた血栓が右心房から左心房を通過して脳に達し、脳梗塞を起こす。
卵円孔開存が関与する脳梗塞は脳梗塞全体の5%というデータもある。「若年者から高齢者まで幅広い年齢層で発症します。一般的には他の脳梗塞より再発は少ないと言われていますが、時に再発する場合もあります」(大木医長)
▽カテーテル治療が保険適用に
再発予防のため、血栓形成を防ぐ飲み薬による抗血栓療法が推奨されている。
19年には新たな治療法が承認され、保険適用となった。脚の付け根の血管から心臓までカテーテルを挿入し、傘のように折り畳まれている円盤状の器具を心臓の中で広げて、卵円孔をふさぐ治療だ。施術後も抗血栓療法を半年以上続ける。薬よりも再発予防効果が高いとする海外の研究結果もある。
治療の対象となるのは、卵円孔開存が元で脳梗塞を起こした60歳未満(原則)の患者。大木医長は「卵円孔開存が脳梗塞の直接の原因なのか、動脈硬化などの他の要因によるものなのか、判断が難しいケースもあります。患者さんと家族が納得して治療法を選ぶことが大切です」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2020/09/25 07:00)
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