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ある日突然、髪の毛が円形や楕円(だえん)形に抜け落ちる円形脱毛症。硬貨大の脱毛部が1カ所にとどまることもあるが、半年くらいの間に急速に増えたり、頭部全体に広がったりすることもある。他人の視線が気になるため、精神的なストレスは大きい。米元皮膚科医院(神奈川県海老名市)の斉藤典充副院長は「一人で悩みを抱え込まず、皮膚科の専門医に相談してください」と呼び掛ける。
円形脱毛症の主な治療法
▽脱毛部が数個以内なら8割が回復
円形脱毛症は年齢に関係なく発症し、人口の1~2%が罹患(りかん)すると推定されている。「一般には、ストレスで発症すると思われていますが、突き詰めると『自己免疫』が関わっています。体内に侵入した外敵と戦う免疫システムの異常により、誤って自分の毛根を攻撃することで毛が抜けるのです」と斉藤副院長は解説する。
免疫異常を来すきっかけはストレスの人もいれば、インフルエンザなどのウイルス感染の人もいる。はっきりしない例も多いという。
治療法は脱毛部の数や面積、脱毛が始まってからの期間によって選択される。例えば、脱毛部が1カ所から数カ所であれば、炎症と免疫反応を抑えるステロイド剤のローションや患部への注射、血流改善、免疫調整効果があるとされる植物エキス(セファランチン)の内服などが行われる。患部にドライアイスを当てるような冷却療法にも、免疫の異常を調整する働きがある。これらの治療によって、脱毛部が単発・少数の軽症例は1年以内に約8割が回復するとされる。
▽免疫抑える新薬が開発中
脱毛部が多く、頭部の25%以上に及ぶ重症例では、免疫調整を目的とした局所免疫療法や紫外線療法、ステロイド剤の静脈注射などが行われる。
局所免疫療法では1~2週に1回、患部に特殊な薬剤を塗って一時的な軽いかぶれ(皮膚炎)を繰り返し起こさせる。かぶれに関わる細胞が、毛根を攻撃して脱毛を起こす免疫細胞の働きを抑えることで、発毛を促す効果があると考えられる。
これらの治療は専門的な医療機関で行われることが多いが、「まず近くの皮膚科専門医を受診してください。必要に応じて、専門施設を紹介されると思います」と斉藤副院長。
ただし、重症例の回復率は軽症例よりも低い。また、斉藤副院長によると、円形脱毛症患者の3~4割が、程度の差はあれ再発することも課題だという。
近年、既存薬とは別の作用で免疫反応を抑えるJAK阻害薬という内服薬の開発が進んでおり、重症患者の治療手段として期待されている。斉藤副院長は「臨床試験中なので、現時点では有効性も安全性も評価できませんが、海外では有効な事例が報告されています」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
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