早期治療で改善の可能性
男性型脱毛症の薬物治療
男性の約3割に発症する男性型脱毛症(AGA)。早ければ20歳代で額の生え際や頭頂部から始まり、徐々に進行して、側頭部と後頭部の毛を残す状態になる。20年前からAGAの診療に携わる東京メモリアルクリニック・平山(東京都渋谷区)の佐藤明男院長は「早期に治療を始めれば、改善する可能性は高まります。気になる場合は専門医に相談を」と話している。
▽早期の段階なら発毛も
AGAは、男性ホルモンから作られるDHT(ジヒドロテストステロン)によって、毛髪の元になる細胞の増殖が抑えられ、徐々に毛髪が薄くなっていく現象だ。
フィナステリドの治療効果(21歳の男性の例)。治療開始から60カ月後に著明に改善
薬物治療が有効で、DHTの産生を抑える内服薬のフィナステリドとデュタステリドが医療機関で処方されている。一般用医薬品としては、血管拡張作用のある外用薬のミノキシジルなどがある。
佐藤院長は「当院では、国内で13年間の使用経験があるフィナステリドを基本薬としています」と話す。佐藤院長らは2006年から3年半の間に服用した患者3177人について効果や副作用を検証。このうち2561人を対象に効果を写真で判定すると、AGAの進行が止まった患者は99.6%、著明に改善(発毛)した患者は11.1%だった。「40歳未満で、7段階中の第4段階までの進行(額の生え際と頭頂部の脱毛範囲がつながっていない状態)なら、明らかな改善が期待できます」と佐藤院長。
副作用は3177人のうち0.7%に表れ、性欲減退などだった。フィナステリドは保険適用外で、1カ月の費用は5000~8000円が目安だという。この薬が効かない場合は、ミノキシジル外用薬を併用するか、デュタステリドに切り替えるという。
▽推奨度の高い治療法の選択を
薬物治療で発毛しない場合、自毛植毛術という方法もある。後頭部から毛を採取し、脱毛している前頭部や頭頂部に移植する手術で、保険適用外となる。脱毛範囲を十分にカバーするには100万円以上の費用が掛かる場合があるという。
日本皮膚科学会は診療ガイドラインで、各治療法の有効性と安全性を検証し、推奨度を定めている。最も高いAランクは、フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジル(外用薬)だ。この推奨度は、患者が医療機関や治療を選ぶ際にも参考になる。佐藤院長は「最初に推奨度Aの治療を提示してくれる医療機関を一つの選択基準とし、十分に説明を受けて納得してから治療を始めるのがよいでしょう」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/04/23 17:53)