治療・予防

中高年女性に多い内くるぶしの痛み
加齢や捻挫から起こる後脛骨筋腱機能不全(京都府立医科大学付属病院整形外科 生駒和也准教授)

 後脛骨筋腱(こうけいこつきんけん)機能不全(PTTD)とは、加齢や捻挫によって内くるぶしの後ろにある後脛骨筋腱が変化して断裂が起こり、扁平(へんぺい)足が生じる疾患だ。進行すると、足の関節が変形してしまう変形性関節症に至る。京都府立医科大学付属病院整形外科の生駒和也准教授は「足に痛みや違和感があるのにほっておくと症状はどんどん進行します」と指摘する。

放置すると痛みはどんどん進行する。早めに受診を

 ▽アーチが下がり、腱が断裂

 PTTDは、50~60代の中年以降の過体重女性に多い。加齢による変化や過度な体重負荷で土踏まずのアーチ部分が下がり、後脛骨筋腱が裂けてしまう。初期は長時間歩くと、内くるぶしの後ろに張りや痛みが出る。進行すると扁平足が強まり、徐々に外くるぶしの下にも痛みが出て足全体の痛みが強まる。

 診断では主に〔1〕後脛骨筋腱がある内くるぶし周囲の腫れや痛みの有無〔2〕片足立ちでかかとを上げられるかどうか―の2点を確認する。「後脛骨筋腱に痛みがあると後脛骨筋が機能せず、片足立ちでかかとを十分に上げられません」と生駒准教授。

 ▽早めの受診が治療の鍵

 PTTDの症状レベルは1~4期に分類される。2期で足が変形し始め、さらに症状が進行した3~4期では正座や長時間の歩行が困難になる。

 治療は、1期では安静を保ち運動を制限することが大切だ。その上で、炎症や痛み止めの薬の服用や患部への注射を行う。靴の土踏まず部分にアーチを保つのに必要なインソールを敷いたり、かかとをしっかり固定できる靴を履いたりして、後脛骨筋を安定させるのも効果的だ。飲み薬の場合は炎症が治まるまで約2週間、注射の場合は2回の注射で合計2週間かかる。

 一方、多くのPTTD患者が来院する2期以降では手術が必要になる。2期前半では踵骨(しょうこつ)骨切り術や長趾屈筋(ちょうしくっきん)腱移行術という手術を、症状が進行した2期後半になると外側(がいそく)支柱延長術を行う。手術後は歩行できるまで約6~8週間、日常生活に戻れるまでには約3カ月かかる。3~4期になると靱帯(じんたい)や腱、骨と手術が広範囲に及び、完治までさらに時間を要する。

 生駒准教授は「PTTDの疾患概念はまだ一般的に浸透しておらず、『捻挫』とひとくくりにされてしまう場合もあります。内くるぶしの痛みや腫れは放置せず、整形外科を早期に受診してください。足を引きずって歩いたり、内くるぶしの痛みを訴えたりする家族がいたら、早めの受診を勧めてください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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