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心臓から肺へ向かう肺動脈の血圧(肺動脈圧)が25mmHg以上になる病気を広く肺高血圧症という。原因別に大きく1~5群に分類されるが、大部分は2群であり、1群と4群は極めてまれである。1群の肺動脈性肺高血圧症は国の指定難病で、かつては有効な治療法がなく、進行性で経過が不良だった。しかし「今は違います」と大阪大学医学部付属病院循環器内科肺高血圧専門外来担当の瀧原圭子医師は話す。
日常の動作がしんどい人、高リスクの人は心エコー検査を実施
▽難病でも治療可能に
肺高血圧症の原因として2群は心疾患、3群は呼吸器疾患に由来し、5群は多因子のメカニズムに伴うものとされている。指定難病のうち、1群は肺動脈そのものの障害で肺動脈性肺高血圧症と呼ばれ、4群は肺動脈が詰まることで生じるもので、慢性血栓塞栓性肺高血圧症と呼ばれている。
いずれの群も肺動脈圧を下げる治療を行うが、方法は各群で異なる。2群では心臓病の治療を、3群では呼吸器疾患の治療を優先する。かつて不治の病とされた1群に対しては、2008年以降、有効な内服薬(肺血管拡張薬)が相次いで開発・使用されるようになり、経過が大きく改善した。
4群も以前は開胸手術だけだったが、最近、経皮的バルーン肺動脈形成術という体への負担が少ない方法や新薬の登場により、これまで手術ができなかった人や再発した人でも予後の改善を目指せるようになった。
そのため瀧原医師は「肺高血圧症を早期に発見して、病型を分類し、速やかに適切な治療を行う重要性が高まっています」と強調する。
▽まずは心エコー検査を
肺高血圧症の診断は、症状や病歴、家族歴、身体所見を確認し、心エコー検査を行う。肺高血圧症の可能性が高ければ、種々の検査を行った上で、血管に細い管を通す右心カテーテル検査を実施し、肺高血圧症を確定、病型を分類する。
しかし、肺高血圧症は早期だと症状がない。また、日常生活の中で徐々に息切れ、疲労感、動悸(どうき)、立ちくらみなどの症状が表れ、ゆっくりと進行するため、症状を自覚できないこともある。高齢者では年のせいにして、何年も放置している場合が少なくない。
肺高血圧症は放置すれば、最終的に心臓の機能が低下して死に至る病気だ。「買い物や犬の散歩、部屋の掃除、洗濯物干しなど、これまで普通にできていたことを“しんどい”と感じた場合や、膠原(こうげん)病や肝臓病などの持病があり肺高血圧症のリスクが高い人は、無症状でも近隣の循環器内科で心エコー検査を受けてください。肺高血圧症が疑われるときは、専門外来に紹介してもらいましょう」と瀧原医師はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/02/01 05:00)
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