慢性血栓塞栓性肺高血圧症〔まんせいけっせんそくせんせいはいこうけつあつしょう〕 家庭の医学

[原因]
 肺動脈内の血栓によって肺動脈が慢性的に閉塞することにより発症します。治療が不十分な急性肺血栓塞栓症の一部が慢性血栓塞栓性肺高血圧症へ移行することが知られていますが、詳細な発症の原因はいまだあきらかではありません。国が指定する難病医療費助成制度対象疾病(指定難病)に含まれており、2021年の国内の助成対象者数は約4800人でした。

[症状]
 ほとんどの症例で労作時の呼吸困難をみとめます。肺高血圧症が進行すると失神発作、肝臓腫大や下腿の浮腫(むくみ)も出現します。

[診断]
 多くの場合、胸部X線検査心電図心臓超音波(エコー)検査で肺高血圧症に特徴的な変化をみとめます。造影CT(コンピュータ断層撮影)検査や肺血流シンチグラフィで、血管内の血栓や部分的な肺内の血流の低下を確認します。心臓カテーテル検査や肺動脈の血管造影は、肺高血圧症や血栓の状態を把握するために必要です。

[治療]
 全身状態や年齢、病変部位などの条件があえば、外科手術(肺動脈血栓内膜摘除術)が治療の第一選択肢となります。手術が困難な場合には、カテーテルを用いて狭窄(きょうさく)した肺動脈をひろげる治療(肺動脈バルーン形成術)がおこなわれます。内服の血管拡張薬も使用可能であり、それらを組み合わせて治療をおこなうこともあります。

(執筆・監修:順天堂大学大学院医学研究科 准教授〔呼吸器内科学〕 長岡 鉄太郎)
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