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新型コロナウイルス感染症の流行拡大は一部で減速の兆しも見えてきたが、医療関係者の間では、糖尿病や高血圧などの慢性疾患のある人の受診控えが懸念されている。生活習慣病の治療中断は病気の進行だけでなく、新型コロナ感染時に重症化する危険性を高めるためだ。
鳥居明医師
東京都医師会の理事で、世田谷区内で開業している鳥居明医師は「新型コロナの重症化というと、重症肺炎による呼吸不全と免疫の過剰反応によるサイトカインストームが知られているが、実は全身の血管に微少な血栓(血の塊)が発生する『全身性血管内凝固症候群(DIC)』も多臓器に深刻な影響を与える」と指摘する。
DICは肺や心筋、脳の血管が詰まって血流を止める梗塞だけでなく、腎障害を進行させる可能性もある。鳥居理事は「分かりやすく言えば、終末期のがん患者などに起きる多臓器不全を短期間で引き起こしてしまう。発見も難しく、治療に高度医療が必要となる」と指摘する。
鳥居医師は、「梗塞の原因となる血栓症のリスクは動脈硬化の進行度に比例する。つまり『体格指数(BMI)』が30以上の病的な肥満や糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病を防ぐか、病状を安定させることがリスクの低減につながる」と説明する。高齢者はもちろん、生活習慣病への警戒が必要な40代以上の人は、日常の健康管理の徹底こそが新型コロナの重症化対策になる。
これらの生活習慣病の完治は難しい。鳥居理事は「服薬などの治療を続けていれば病状は安定する。まずは悪化させず安定させること。しかし、治療を中断しても強い自覚症状が無いだけに、コロナの感染を恐れて治療を中断している患者も少なくないのが実情だ」と嘆く。
福永興壱教授
慶應義塾大学医学部の福永興壱教授(呼吸器内科)も「ある調査では、新型コロナの感染が拡大した2020年3月以降、医療機関の受診者数は前年同月比でマイナス。受診控えは起きている」と断言する。
特に福永教授の専門とする気管支ぜんそくは治療薬の処方量からも受診控えが起きていることは明白で、治療の中断さえ危惧している。「26%のぜんそく患者が発作などの症状が悪化したが、その4分の3が受診しなかったとの調査がある」と説明する。受診しない理由は、「新型コロナの感染が不安」が32.4%に上っていたという。
医療機関側も感染対策の強化に日々取り組んでいる。新型コロナの感染リスクを高める「密閉・密集・密接」の「3密」をできるだけ軽減するため、慶大病院では、これまで午前中に集中していた予約診療を午後に回したり、入院患者と外来患者の接触をできるだけ回避させたりする対策を積み重ねている。福永教授は「ぜんそくの自覚症状が悪化した際に放置していると、気管支などの状況が悪化してしまう。悪化したら、医師の診察と治療を受けてほしい」と訴える。(了)
(2021/03/02 05:00)
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