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耳下腺腫瘍は唾液を作る唾液腺に発生する腫瘍。良性が多いが、腫瘍が大きくなると悪性(耳下腺がん)に変わるタイプもある。「耳下腺内には顔面神経という顔の筋肉を動かすための大事な神経が走り、手術が難しい場所でもあるので、治療経験豊富な施設での治療が望まれます」と大阪医科薬科大学(大阪府高槻市)耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室の河田了教授は話す。
悪性の約半数が痛みを伴う
▽約80%が良性
耳下腺は唾液腺の一つで、左右の耳の前から下辺りにある。耳下腺腫瘍の多くはこの部分に手で触って分かるほどのしこりのようなものができる。発症年齢は10~80代と幅広く、原因はよく分かっていない。
腫瘍の種類はさまざまで、世界保健機関(WHO)の分類では良性11タイプ、悪性24タイプに分けられる。1999年9月~2020年12月に同大学付属病院を受診した耳下腺腫瘍患者は1272人で、そのうち良性は1054人だった。良性では多形腺腫とワルチン腫瘍という2タイプが約9割を占めていた。
悪性では、痛み、周囲組織との癒着、顔面神経まひが特徴的で、約半数が痛みを伴う。良性では腫瘍が癒着することは少ないので、触れば動くことが多い。
「耳下腺腫瘍は診断が大事です」と河田教授は強調する。診断には、磁気共鳴画像(MRI)検査や超音波検査などを行う。さらに手術で採取した組織を調べ、良悪性の診断に加え、悪性であればその程度を見極める。
▽治療の基本は手術切除
耳下腺腫瘍の治療は良性・悪性にかかわらず手術切除が基本である。耳下腺内には顔面神経が扇状に走っているので手術の難易度が高い。腫瘍の大きさが2センチ程度になると手術では顔面神経との接触は避けられず、術後に一時的な顔面神経まひが残ることがある。ただし、まひは術後2カ月で約50%、1年でほぼ100%回復する。「良性では顔面神経の温存が基本です。また多形腺腫は再発の可能性があるので完全に切除する必要があります」と河田教授。一方、ワルチン腫瘍は60歳以上の男性に多く、悪性化しにくいため、手術せずに経過観察にとどまるケースが多いという。
悪性の発生頻度は低いが、がんが周囲に広がる可能性があり、一般に手術では広範囲を切除する。そのため、顔面神経の温存が難しい場合もある。術後に放射線治療を行う場合もある。術後10年、20年たって再発することもあり、長期間、定期的な検査が必要になる。
河田教授は「耳下腺腫瘍は治療方針が分かれる多くのタイプがあり、手術の難易度が高いことなどから、耳鼻咽喉科や頭頸部外科など専門医への受診を勧めます」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/05/22 05:00)
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