おたふくかぜの合併症-ムンプス難聴
幼少期に2回予防接種を
おたふくかぜ(ムンプス=流行性耳下腺炎)は、子どもがかかりやすい感染症の一つだが、まれに無菌性髄膜炎、脳炎、難聴などの深刻な合併症を起こすことは意外と知られていない。「ムンプス難聴」について、国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)感覚器・形態外科部耳鼻咽喉科の守本倫子診療部長に聞いた。
ワクチンの接種により予防を
▽1000人に1人が発症
おたふくかぜの病原体はムンプスウイルスで、せきやくしゃみで飛び散った飛沫(ひまつ)を吸い込むことによる飛沫感染や、唾液の接触感染により人から人へとうつる。頬にある耳下腺(じかせん)が腫れて痛む、高熱が出るなどが典型的な症状だが、ほとんど症状が出ずに自然に治るケースもある。
問題は、ムンプスウイルスが内耳(音を感じ取る器官)に侵入して細胞にダメージを与え、難聴になる場合があることだ。「2015~16年のおたふくかぜの流行後に行われた調査では、就園、就学年齢と保護者世代に発症が多く、妊婦や0歳児にも発症例がありました」と守本診療部長。ムンプス難聴といわれ、ムンプス患者の1000人に1人が発症する。有効な治療法はない。「後遺症として重度難聴が残る人がほとんどです。ムンプスワクチンを2回接種し、おたふくかぜを予防することが大切です」と守本診療部長は強調する。
▽低迷するワクチン接種率
無菌性髄膜炎などの副反応の報告があったため、ムンプスワクチンは現在任意接種となっている。しかし最近は3歳未満の乳幼児に接種されているからか、副反応の発症もかなり減っている。だが、接種率は30~40%と低迷している。守本診療部長は「合併症に対する保護者の理解が進まず、接種費用がかかることも一因と考えられます」と話す。
中には、自然に免疫がつくようにと、患児と一緒に遊ばせて感染させようとする保護者もいるというが、「ワクチン接種により得られるベネフィット(利点)の方が、濃厚接触で感染して難聴などの合併症を発症するリスクを明らかに上回ります」と警鐘を鳴らす。
ムンプスワクチンの定期接種化を政府に働き掛ける動きがある一方で、副反応発生率の低いワクチンの開発も進められている。守本診療部長は「おたふくかぜには重篤な合併症があることを理解し、副反応の発症リスクの低い1~2歳の間に1回目、5~7歳未満に2回目の予防接種を受けてほしい」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/04/20 11:00)