2022/03/18 05:00
もしかしたら「病気のサイン」かも?
~不眠、食欲不振、痛み…放置せず対処を~
5月になると、日差しがとても強くなってきました。紫外線もたっぷりと降り注ぎ、肌の日焼け対策を気にする時期ですが、目も同様に紫外線対策が必要なのです。
サングラスは紫外線をカットできるものを
◇白内障など目の病気の原因に
屋外での作業やスポーツなどで紫外線を浴びると、目にも紫外線が入り、ダメージを受けます。長年にわたり紫外線を浴び続けると、白内障をはじめ加齢黄斑変性、翼状片などの目の病気の原因になります。
白内障は、目のレンズの役割の水晶体が濁り、かすみ目や見えにくい症状が表れる病気です。加齢に伴い増える病気で、見えにくくなると、レンズを入れ替える手術が必要になります。長生きする人が増えていることもあり、白内障は、多く見られる眼科の病気ですから、予防を心掛けておきたいものです。
紫外線が原因になり得る目の病気を予防するためには、目に入る紫外線を防ぐことが大切です。サングラス、紫外線をカットできる機能の付いたメガネやコンタクトレンズ、帽子などの利用が望まれます。
サングラスも紫外線をカットできるものを選びましょう。レンズの色が黒など濃い方が紫外線をカットできそうなイメージですが、実は反対です。色の濃いサングラスを掛けると、目の周囲が極端に暗くなって瞳孔が開き、結果的に目に多くの紫外線が入り込んでしまい、逆効果なのです。サングラスは色の薄めのものがお薦めです。
色の薄めのものがお薦め
メガネやサングラスは、正面からの紫外線はカットしやすいのですが、側面からは紫外線が入り込みます。側面にもレンズがあるものや、目を覆うようなデザインのものがお薦めです。スポーツ用のサングラスには、そんなデザインのものがいろいろあるので、選ぶ時の参考にして下さい。ファッションも兼ねたサングラスなら、レンズが大きめのものや、レンズと顔の隙間がなるべく小さいものがよいでしょう。そして、つばの広い帽子との併用で、側面から入る紫外線を防ぐようにします。
ゴルフ、釣り、登山やハイキング、サイクリング、農作業、海辺で過ごすなど、屋外で多くの紫外線を浴びてしまう時にはスポーツタイプのしっかりガードのサングラス、街中を歩く短時間ならファッションも兼ねたサングラスでおしゃれにと、使い分けるのも一案です。紫外線カット機能にも、レベルがありますから、購入時に使用目的などを話して相談するとよいでしょう。
ガーデニングや庭の掃除、子どもの屋外スポーツの応援、アウトドアのイベント、行列店に並ぶ、立ち話が長引く、といったことも、意外と長時間にわたり紫外線を浴びることになるので要注意です。サングラスを使用しにくい職種や状況もあるでしょう。その場合は、クリアレンズのUVカット眼鏡(度の入っていない眼鏡で、紫外線を防ぐもの)を利用する方法もあります。TPOに合わせてサングラスや眼鏡を使い分けるのも楽しいと思います。
◇紫外線が当たっていない肌も日焼け
目から入る紫外線は目にだけ害を及ぼすのではないことが、最近では定説になっています。目の角膜に紫外線が当たり炎症を起こすと、その情報が脳に伝わって全身のメラニン産生細胞が刺激され、紫外線が当たっていない肌でもメラニンが産生されて日焼けをしてしまいます。
メラニンは日焼けや、シミやソバカスの原因になりますが、さらに深部の細胞に紫外線が入ることを防ぐ「皮膚内の天然の日傘」とも言われています。おそらく、目から入る紫外線によって紫外線を浴び過ぎだと脳が察知すると、全身の細胞が傷つくことを恐れて、肌にメラニンを増やして防御するのでしょう。
美肌のためだけでなく目の健康のためにも、日頃から紫外線を防ぐ日傘や帽子、サングラスなどは使いたいものです。特に紫外線が強くなる5月からは、紫外線予防のためのグッズは必需品です。
太陽光は害だけでなくメリットも
◇全身疲労の原因にも
日差しの強い日に海に行ったり、「青い空の下は気持ちが良い」と屋外で長く過ごしたりすると、その後はグッタリと疲れること、ありますよね。紫外線を浴び過ぎると、体内で疲れの原因にもなる活性酸素という物質が過剰に作られます。すると自律神経が乱れて、身体の不調や疲労を生じます。そして、「すごく疲れた!!」と自覚することになります。
活性酸素は大量の紫外線を肌や目で浴びることで過剰に発生します。特に目に入る紫外線が多過ぎると、眼精疲労も起こし、それも大きなストレスとなり、さらに活性酸素を発生させたり、心身の疲れを引き起こしたりします。
しかし、太陽光は人間にとって害になるばかりではなく、メリットもあります。太陽光を浴びることで、皮膚でビタミンDをたくさん作ります。ビタミンDは食事からでは十分に摂取できないので、太陽光を浴びることでビタミンDを補うことは大事です。ビタミンDは骨を強く維持することに関わっています。さらに、ビタミンDはアレルギーを抑制する効果、認知機能の低下を防ぐ働きなど、いろいろな効果が期待されています。
昼間にきちんと太陽の光を感じておくことで、夜の良い睡眠にもつながります。ぐっすり眠り、翌朝気持ち良く起床するためにも、太陽光は大切なのです。
また、秋から冬にかけてうつ病が増えるのは、ビタミンD欠乏が一つの原因ではないかと言われており、太陽光は、うつ病対策の一つに挙げられます。その上、脳が幸せや安心感を得られる「セロトニン」と呼ばれる一種のホルモンも、日差しを浴びることでたっぷり分泌されます。心の健康にも、太陽光は大きな役割を果たしているというわけです。
そもそも青空の下で過ごすことは気持ち良いですよね。太陽光には、心身共に元気にしてくれる不思議なパワーがあることを実感できます。ステイホームの時間が長い昨年と今年ですが、時には青空の下で大きく呼吸しながら明るい日差しを楽しみたいですね。ただし、肌の日焼け予防にプラスして、目の紫外線対策はお忘れなく。(了)
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▼福田千晶(ふくだ・ちあき)
慶應義塾大学医学部卒業、医師として東京慈恵会医科大学病院リハビリテーション科勤務を経て、クリニックでの診療と産業医業務を行う。勤務医時代に、エッセーや論文のコンテストでの受賞などをきっかけに執筆活動も開始し、健康に関するテーマで著書や監修書は多数。
日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本人間ドック学会人間ドック健診専門医、日本リハビリテーション医学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本体力医学会健康科学アドバイザー。
(2021/05/21 05:28)
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