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風邪や下痢などの後に、手足のしびれや筋力低下が表れるギラン・バレー症候群。標準的治療は確立しているが、全ての患者が完全に治るわけではないため、新たな治療法が求められている。新薬の開発に携わる千葉大学医学部付属病院(千葉市)脳神経内科の三澤園子准教授は「新たな治療法が開発されれば、患者さんのより完全な回復と生活の質(QOL)改善を目指せます」と話す。
感染から4週間以内に症状が出現
▽歩行や呼吸に支障も
ギラン・バレー症候群は、ウイルスや細菌の侵入で発症する末梢(まっしょう)神経の病気。病原体の種類により、末梢神経の髄鞘(ずいしょう)と呼ばれる組織が剥がれるパターンと、軸索(じくさく)と呼ばれる組織が傷つくパターンに分かれる。
国内では年間で約1400人が発症しているとされ、カンピロバクターの感染による軸索型が多い。進行は早く、感染から4週間以内に手足のしびれなどが表れる。重症化すると歩けなくなるほか、呼吸する筋肉の力が低下し人工呼吸器が必要となる場合もある。
治療では、遠心分離機で血液中の有害物質を除去する血漿(けっしょう)浄化療法か、血液中の成分から精製した免疫グロブリン製剤の静脈注射が行われている。しかし、患者の約5%が死亡し、約20%が発症から1年たっても歩行ができないなど、課題が多い。
▽新たな試験が始動
三澤准教授らの研究グループはエクリズマブという薬に着目。C5と呼ばれる免疫に関わるタンパク質をブロックすることで、軸索障害へ有効な可能性があるという。三澤准教授らの臨床試験では、エクリズマブを投与された患者の74%が24週間で走れるまでに回復した。
昨年6月には、厚生労働省がエクリズマブを薬事承認の「先駆け審査」の対象に指定。画期的な新薬と位置付け、臨床使用に向けた審査を優先的に進める方針を打ち出している。
今年2月には、より多くの患者でエクリズマブの臨床試験が始まった。三澤准教授は「新型コロナの影響で試験に参加する患者さんの登録は難航が予想されますが、ギラン・バレー症候群に対する有効性を検証しているのは日本だけ。試験を成功させ、日本発の新規治療を患者さんに届けたい」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/08/01 05:00)
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