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1日の大半をベッドや車いすの上で過ごす高齢者の介護では、床擦れ(褥瘡=じょくそう=)に対するケアが重要だ。最近、介助のやり方によっては発症リスクが高まることが分かってきた。日本褥瘡学会理事を務めるふくろ皮膚科クリニック(横浜市)の袋秀平院長に、在宅向けのケアについて聞いた。
電動ベッドの角度を変えた後(背上げ後、背下げ後)に行う
▽「ずれ力」に注意
マットレスやクッションなどで皮膚が持続的に圧迫されると(静的外力)、その部分の血流が低下して褥瘡が発生しやすくなる。そのため、寝たきりの人の介護では、定期的に体の向きを変える体位変換が欠かせない。
ただ最近は、体位変換や車いすへの移動、おむつ替えなどの日々の介助が皮膚への圧迫(動的外力)となり、褥瘡の治りを遅くしていることが分かってきた。袋院長は「皮膚に垂直にかかる圧力だけでなく、引っ張られたり擦れたりする力(ずれ力)もリスクです」と説明する。
防ぐには、例えば電動ベッドの角度を変えた後は、上体をベッドから浮かせて衣服やシーツの突っ張りやしわを取る背抜きのほか、お尻を浮かせる腰抜き、脚全体を離すかかと抜きという介助が大切になる。
▽低栄養もリスクに
また、寝返りができないことに加え、痩せて骨が突出している、関節が固まっている、むくみなどで皮膚が弱くなっている―などはリスクになる。その場合は、自動体位変換機能を備えた床擦れ防止用エアマットの使用が勧められる。介護保険でレンタルも可能だ。
見落とされがちなのが栄養状態だ。低栄養に陥ると褥瘡ができやすく、治りにくくなる。食事を取っているように見えても、実は量が少なかったり栄養バランスが偏っていたりする場合もあるという。「急な体重減少は低栄養のサイン。栄養補助食品なども積極的に活用してください」
予防とともに重要なのが早期発見。介護者は毎日の着替えや入浴時などに全身をくまなく観察し、皮膚が赤くなっていたら褥瘡を疑って、すぐに医師や看護師に伝える。初期の軽いものであれば、患部の除圧と経過観察で改善することもある。
コロナ禍の自粛生活で、健康に歩ける人でも長時間同じ姿勢でテレビやパソコンを見ていて褥瘡ができるケースがあるという。「褥瘡は思っているより簡単にできてしまいます。多くの人に正しい知識を身に着けてほしい」と袋院長は語っている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/10/26 05:00)
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