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日常的に長時間、長距離の運動に取り組む女性ランナーに下痢など消化器の不調が見られることがある。これまで因果関係は分からなかったが、腸内の細菌が関係することなどが明らかになりつつある。京都府立医科大学(京都市)医療フロンティア展開学の高木智久准教授に聞いた。
長時間、高強度の運動が腸内環境を悪化させ、下痢を起こす(写真は2018年アジア大会女子マラソン、AFP時事)(写真と本文は関係ありません)
▽腸管内が炎症
「陸上競技で世界選手権などレベルの高い試合に出場する女性選手が、試合を想定した高強度の運動後や試合後に下痢や風邪のような症状を起こしやすいことは、1990年代から指摘されていました」と高木准教授は話す。
高強度の運動中には消化器の血液の流れが悪くなり、一方で運動後には血流が回復する。その際に毒性物質が産生される虚血再灌(かん)流障害が起きることがある。すると、腸管内に炎症による酸化ストレスがかかり下痢などの原因になり得るという。しかし、こうした下痢のメカニズムはこれまで明確ではなかった。
高木准教授らは、摂南大学農学部の井上亮教授、京都府立大学生命環境学部の青井渉准教授との共同研究において、国内トップレベルの女性長距離ランナーを対象に、長時間、高強度の運動が腸内環境に及ぼす影響を調査した。
▽コハク酸が上昇
健康な女性14人と女性長距離ランナー15人を対象に、便に含まれる短鎖脂肪酸濃度と腸内細菌群を解析した。その結果、ランナーの女性は下痢の原因となるコハク酸の便中濃度が高く、コハク酸を産生するフィーカリバクテリウム属細菌の比率も上昇していた。また、腸の炎症との関係が報告されているヘモフィルス属、ロチア属、ムシスピリラム属細菌の比率も高いことが分かった。
調査の対象となった女性長距離ランナーは、十分な量の食物繊維、抗酸化成分を含む食事を摂取しており、栄養管理は行き届いていた。食物繊維には抗酸化作用もあり、腸内の酸化ストレスを抑えるが、それを上回る運動の量と強度で、虚血再灌流障害を起こしやすい状態にあったと考えられるという。
高木准教授は「長時間、高強度の運動が腸内環境を悪化させ、下痢を起こすことが確認されました。さらに研究が進めば、長距離ランナーの体調管理に役立つことが期待されます」と語っている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/11/22 05:00)
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