治療・予防

アスリートの鉄欠乏―スポーツ貧血 
成長期は特に注意

 動悸(どうき)や息切れ、疲れやすさなどの不調を抱えながら競技に取り組むアスリートが少なくない。日本スポーツ内科学会代表理事の田中祐貴医師は「不調の原因は、アスリート特有のスポーツ貧血かもしれません」と指摘する。

運動能力が低下。中でも持久力の低下が目立つ

 ▽持久力低下が顕著

 中学から陸上の長距離種目を始め、自己記録の更新を続けていたある高校生。徐々に息切れが目立ち、記録が伸び悩むようになった。スランプと思っていたが、顧問の勧めでスポーツ内科を受診したところ、スポーツ貧血と分かった。「このようなケースは少なくありません」と田中医師は話す。

 スポーツ貧血とは主に、運動や競技スポーツが原因で生じる鉄欠乏性貧血をいう。鉄分が不足する要因は、まず運動負荷に応じた筋肉量の増加とともに必要な鉄が増える鉄需要の増加がベースにある。そこに鉄の吸収を阻害するヘプシジンというホルモンが運動により増加して起こる鉄吸収の低下、食事で取る鉄分の不足、月経や発汗量の増加などが加わる。そのほか、マラソンなどで繰り返し加えられる足底への衝撃により、赤血球が壊される溶血が関与することもある。

 体内で鉄が欠乏すると、赤血球内のヘモグロビン(Hb)が生産されにくくなる。Hbは酸素と結び付いて全身に酸素を運ぶ大切な役割を担っているため、Hbの減少を来す貧血状態では酸素運搬能力が低下し、息切れや動悸(どうき)、倦怠(けんたい)感などの症状が表れる。スポーツ貧血では、運動能力の低下、特に持久力の低下が目立つという。

 ▽食事療法と鉄剤内服

 スポーツ貧血の診断は、血中のHbやフェリチン(鉄貯蔵たんぱく)などの値から行うが、栄養状態を推定できる総たんぱくなどの値も参考にする。Hbは、世界保健機関(WHO)の基準では血液1デシリットル当たり、男性では13.0グラム、女性では12.0グラム未満が貧血だが、アスリートにおいては、男性14.0グラム、女性12.5グラム未満が貧血とされている。

 治療は、原因となっている鉄欠乏の改善が中心となる。「スポーツ貧血の治療には食事療法が重要です。必要なエネルギーをバランスよく摂取した上で、鉄を十分に取ることが求められるため、スポーツ栄養士との連携が不可欠です」と田中医師。フェリチンの値によっては鉄剤を内服する。しかし鉄を過剰摂取すると、心臓や肝臓、神経などの機能障害を起こす危険があるため、定期的な血液検査で鉄剤の量を調整することが必要だ。

 成長期は筋肉量が一気に増え、クラブ活動も本格的になるなど、鉄の需要が増えるので、スポーツ貧血に陥りやすい。田中医師は「不調が続くようであれば、専門医に相談するのがよいでしょう」と、早期の受診を勧めている。

 全国のスポーツ内科医については、日本スポーツ内科学会のホームページで確認できる。(メディカルトリビューン=時事)

新着トピックス

横浜市立大学医学部医学科同窓会 倶進会