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実際には明らかな口臭はないにもかかわらず、「臭いがする」と自分で思い込んでしまう「口臭恐怖症」について、日本歯科大学付属病院(東京都千代田区)総合診療科の小川智久准教授に聞いた。
▽対人関係に支障も
口臭の有無は息に含まれるガスなどの成分を検出する口臭測定器や、実際に他者が臭いをかぐこと(官能検査)で判定する。「こうした検査で明らかな口臭が確認されなくても患者さんは納得できず、悩んでいます。口臭で迷惑を掛けているという思いが強いのが特徴です」
たまたま相手が顔をそむけたり、鼻や口元に手を当てたりするしぐさに過度に反応し、気にするあまり会話に支障を来すことも。中には「電車に乗ると他の乗客が避けて降りる」と訴える人もいる。こうした妄想とも考えられるケースは統合失調症などの精神疾患の可能性があり、精神科と連携して治療を進めることもあるという。
▽捉え方の変化を促す
ただ、全てが思い込みとは限らない。「人間である以上、口臭をなくすことはできません。検査時に問題がなくても、口臭がする時があるかもしれません。過去に人から口臭を指摘されたことがあり、それがきっかけとなった患者さんも多くいます」
そこで、原因となり得る歯周病やドライマウス(口の中の乾燥)、舌の汚れなどを検査し、口腔(こうくう)ケアなどの対策を取った上で、本人の捉え方を変えていくアプローチが重要になる。
「10代の女性患者の場合、小学校高学年の時に『口が臭い』といじめられたのがきっかけと分かりました。その年齢の頃にホルモンバランスの乱れから思春期性歯肉炎という歯周病が起こることがあります。『その時はそれが原因だったのかもしれませんが、今は口腔ケアもしっかりして、口の中もきれいです』と説明したところ、問題が解決しました」と治療経験を語る。
また、会話の際に口臭を気にして緊張するあまり、唾液が出にくくなり、口の中が乾燥して口臭がしやすい状態になることもあるという。「その場で水分を口に含む対策が有効です。唾液の分泌は自律神経の反応で、リラックスできれば唾液が出やすくなります。過度の緊張が悪循環を招くことに気付き、そこから抜け出すことも大切です」と小川准教授はアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/01/12 05:00)
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