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高血圧の正しい治療に自宅測定が欠かせない理由 専攻医・渡邉 昂汰

 日本人の3人に1人が該当する高血圧は、私たちにとって最も身近な疾患の一つです。

 私の外来では、毎日の血圧手帳への記入をお願いしていますが、自宅での血圧測定に消極的な患者さんが少なからずいます。

高血圧治療を効果的、かつ安全に行うには自宅での血圧測定は必須です【時事通信社】

 診察室での測定で十分だろう、と思うかもしれませんが、高血圧治療を効果的、かつ安全に行う上で、自宅での血圧測定は必須と言えます。
 
 ◇診察室の血圧は不正確

 血圧は測定する環境によって変動しますが、特に診察室という非日常の場面では、大きく上下してしまう人もいます。

 「白衣高血圧」はその典型例で、診察室での血圧は高くても、自宅での血圧は正常なものです。反対に、診察室での血圧は正常でも、実は自宅での血圧は高値となる「仮面高血圧」という病態もあります。

 これらを考慮せずに、診察室での血圧をその人の普段の血圧として治療してしまうと、本来治療すべき高血圧が見逃され、その一方では過剰な降圧により、医原性のめまいや立ちくらみなどを生じてしまう可能性があります。
 
 ◇見逃しやすい早朝高血圧

 起床後1時間以内の血圧が高い「早朝高血圧」という病態もあります。

 早朝高血圧は、脳・心臓・腎臓など全ての脳心血管病リスクと有意に関連し、将来の脳卒中や後期高齢者要介護のリスクが高くなると科学的に示されており、早期に介入すべき病態です(編注)

 診察室に着く頃には血圧は正常値になっているので、このような高血圧を見逃さないためには、朝晩の自宅での血圧測定が必要です。

 自覚症状が乏しく放置されがちな高血圧症ですが、「サイレントキラー」とも呼ばれ、多くの命に関わる疾患を進行させる重大な疾患です。

 適切な治療で将来の健康寿命を延ばすために、自宅での血圧測定を習慣化し、かかりつけ医と治療方針を相談していただければと思います。

 (編注)高血圧治療ガイドライン2019

(了)


 渡邉 昂汰(わたなべ・こーた) 内科専攻医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。

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