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病状に合わせて処方される糖尿病治療薬のうち、医療保険の適用外で、ダイエット目的で糖尿病治療薬が認可外で処方されるケースが見受けられるという。日本医師会(東京都文京区)の今村聡副会長は「健康な人が糖尿病治療薬を使用すると、重大な健康問題を引き起こしかねません」と警鐘を鳴らす。
ダイエット目的でのGLP―1受容体作動薬による健康リスク
▽ルール外使用が横行
ダイエット目的で使用されるのは、GLP―1受容体作動薬という薬だ。GLP―1は食事を取ると小腸から分泌されるホルモンの一つで、インスリンの分泌を促し血糖値を下げる作用がある。
今村副会長は「本来は食事や運動で血糖値のコントロールができず、インスリン分泌が保たれている2型糖尿病患者に使用される薬です」と説明する。ただ、この薬には満腹感を得たり食欲を抑えたりする働きもあるため、ダイエット目的で使用されるようになったと考えられる。
そのため、直接診察せずに薬が処方されたり、決められた薬価の何倍もの値段で販売されたりするケースが出てきたという。「保険診療と異なり、自由診療では患者のニーズに医師がOKを出せば成り立ってしまうのが怖いところです。こうした安易な処方は、医師側のモラルの問題もあるでしょう」
▽長期利用でリスクも
本来の治療目的から外れる薬の使い方は、健康上の問題を招きかねない。健康な人が糖尿病治療薬を使用すると、正常な糖代謝に負荷をかけてしまう。
「健康な人がGLP―1受容体作動薬を長期に使用すれば、急性膵炎(すいえん)や腸閉塞、膵臓(すいぞう)がんなどを起こす恐れがあります。ルールから外れた使い方をすることで生じるリスクについて、きちんと説明されているかも疑問です」と今村副会長。国民生活センターに複数の健康相談が寄せられ、消費者庁や厚生労働省も注意を呼び掛けている。
今村副会長は「医学的に認められているダイエットの基本は、食事と運動のバランスだということを決して忘れないでください」と強調している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/06/05 05:00)
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