教えて!けいゆう先生

テレビの医療・健康情報で注意してほしいこと
~「科学的根拠を示さない私見」の危険性~ 外科医・山本 健人

 以前、あるテレビ番組で発信された健康情報が、物議を醸したことがあります。

 「納豆にダイエット効果がある」と紹介され、全国的に納豆が品薄になったものの、後に捏造(ねつぞう)であることが発覚したのです。

テレビの影響力は大きいですが、その情報は必ずしも正しいとは限りません【時事通信社】

 このことは大きな批判を呼び、番組は中止されました。

 医療、健康に関わる大切な情報が、このように軽々しく扱われてしまう。非常に残念なことではあります。

 しかし、これほどまでに多くの人が、テレビの内容を信じて納豆を買いに走ったという事実も、重く受け止める必要があるでしょう。

 医療や健康に関わる情報が世間に与える影響は、非常に大きいのです。

 ◇出典を明示する目的

 私たち専門家は、情報を発信する際、必ず信頼できる出典を明示しなければならない、と考えています。

 信頼性の高い科学雑誌に掲載された論文や、それらを基にして作成された、学会や公的機関のガイドラインなどが根拠として示されない発信は、単なる「私見」や「感想」に過ぎないからです。

 ただし、出典を明示することの目的は、「正しさの証明」ではありません。

 出典に当たることで、第三者が「情報の確度を検証できること」に意味があるのです。

 その点では、出典の明示はあくまで議論の「入り口」で、最低限の第一歩だと言えるでしょう。

 もちろん、出典のない「個人的な考え」を発信することが、必ずしも悪いわけではありません。そうしたアイデアが、学問を良い方向に動かすこともあるでしょう。

 しかし一方で、情報の受け手である非専門家は、「明確な科学的根拠の示されない私見」に自分の健康を委ねることの危険性を知っておく必要があります。

 ◇信頼できる情報とは

 知っておくべきことは、もう一つあります。

 仮に科学者が新事実を発見したとして、それを最初に報告するのは一般的に「テレビ」ではないということです。

 何よりまず、研究成果を論文としてまとめ、信頼性の高い科学雑誌に投稿することから始めるでしょう。

 複数の第三者から「査読」と呼ばれる厳しいチェックを受け、それに耐え得る形で何度も修正を重ね、ようやく公開される情報こそが大きな価値を持つことを知っているからです。

 他の科学者からの「批判的吟味」というハードルを超えない発信には、信頼性を見いださないのです。

 テレビで医療、健康系の話題が扱われると、患者さんから、
「〇〇の成分を含んだ食品を食べたほうがいいでしょうか」
「私も△△を生活に取り入れたほうがいいでしょうか」
といった質問を受けることが、少なからずあります。

 医療、健康に関わる情報に出会ったときは、それが本当に信頼に足るものなのか、ぜひ一度、立ち止まって考えてみてほしいと思います。

(了)

 山本 健人(やまもと・たけひと) 医師・医学博士。2010年京都大学医学部卒業。外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、感染症専門医、がん治療認定医、ICD(感染管理医師)など。Yahoo!ニュース個人オーサー。「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報サイト「外科医の視点」を運営し、開設3年で1000万PV超。各地で一般向け講演なども精力的に行っている。著書に「医者が教える正しい病院のかかり方」(幻冬舎)、「すばらしい人体 あなたの体をめぐる知的冒険」(ダイヤモンド社)など多数。


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