食事に対する不健康な執着
~摂食障害の一種―オルトレキシア(パークサイド日比谷クリニック 立川秀樹院長)~
「健康的な食べ物への不健康な執着」と呼ばれるオルトレキシアは自分が考える健康的な食事に執着し、それしか口にできなくなる摂食障害の一つ。パークサイド日比谷クリニック(東京都千代田区)の立川秀樹院長は「あまり知られていない病気です。本人も気付かないことが多く、周囲の指摘で初めて自覚する場合が少なくありません」と話す。
健康的な食事に不健康なまでに執着してしまう
▽白米だけの人も
オルトレキシアは、拒食症や過食症のように体形や体重ではなく、自分が考える健康的な食事に強い執着を示す。小麦、肉や魚、卵などの動物性や、添加物が入っている食品を口にせず、極端な例では白米しか食べない人もいる。
立川院長は「健康を意識し始める30代以降の女性で目立ちます。こだわりが強く、他者からの情報に影響されやすい、行動の結果に対する想像力に乏しい人が発症しやすい傾向です」と説明する。
最初はダイエットや健康目的だが、次第に自分の中で絶対的な健康食をつくり上げ、それ以外は悪であるという強迫観念に支配される。子どものアレルギー改善食にこだわるあまり、自らが発症した母親もいるという。
「自分で決めたルールがコントロールできなくなり、人と食事に行けないなど生活に支障を来し、人間関係にも影響を及ぼします」
▽治療は気長に
オルトレキシアは、多くの場合、強迫性障害に移行しやすい。「一日中、食事のことが頭から離れません。まずこの強迫観念を取り除いていきます」と立川院長。薬で脳内の神経伝達物質の一つであるセロトニンを補うと、思考に余裕が出てくる。その後に考え方や物事の捉え方を変える認知行動療法を行う。
「今まで体に悪いと思っていた食べ物でも、少しくらいなら大丈夫と思えるようになり、食べられる物が増えていきます」。健康志向をゼロにするのではなく、困らない程度までハードルを下げることが治療のゴールになる。時間はかかるが、気長に取り組むことが大事だ。
オルトレキシアは、本人が病気だと気付かない限り治療を始めるのが難しい。立川院長は「食事のことで周囲から指摘され、不都合を感じることが多かったら、摂食障害を診る精神科の医療機関に一度相談してください」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/12/12 05:00)
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