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2018年7月に広島県を中心に甚大な被害をもたらした西日本豪雨では、高齢の被災者で避難生活による認知機能や認知症の悪化が見られ、興奮などの周辺症状には漢方薬が効果的だったことが分かった。調査に当たった広島大学大学院医系科学研究科(広島市)地域医療システム学講座の石田亮子講師、吉田秀平助教に聞いた。
高齢者の避難所生活は認知機能の低下リスクがある
▽自宅でも悪化
西日本豪雨災害では避難所での生活による被災者の健康被害が懸念された。石田講師らの研究チームは、被災による認知機能や認知症治療への影響を医療、介護の公的データを用いて調査。対象は甚大な被害を受けた広島、岡山、愛媛の3県の介護保険による介護サービスを受けた高齢者約26万人で、被災者はうち約1%だった。
被災から半年間にわたって認知機能を観察した結果、被災者は被災しなかった人たちに比べ、認知機能が悪化する割合が高かった。吉田助教は「特に、自宅にいる高齢者で認知機能低下のリスクが高いことが分かりました。自宅から避難所に避難したことなど、環境の変化が影響したと考えられます」と分析する。
▽抑肝散の処方が増加
災害による避難生活が認知機能を悪化させることは東日本大震災などでも確認されているが、認知症治療の変化を調べた報告は少なく、研究チームは、災害後の認知症治療薬の処方回数や量の変化を調査した。
その結果、被災者は被災しなかった人に比べ、災害後に新たに認知症治療薬を処方された割合が明らかに高く、災害前から治療薬が処方されていた場合にはその処方量の増加率が高かった。
さらに研究チームは、処方薬の傾向についても調査。3県の高齢者約137万人のレセプトデータを検討したところ、漢方薬の抑肝散(よくかんさん)が、発災後1年間で処方された人の割合が被災しなかった人に比べ約1.5倍高かった。
抑肝散は神経症、不眠などに効果がある漢方薬で、興奮、いらいらなど、認知症の周辺症状に対する使用が勧められている。石田講師は「認知症高齢者のメンタルケアを行いながら災害を乗り切る上で、抑肝散などの漢方薬の活用が期待されます」と話す。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/06/22 05:00)
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