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抗がん剤などによるがん治療で起こり得る副作用の一つに「腫瘍崩壊症候群」がある。命を脅かす状態になることが多い。福井大学医学部血液・腫瘍内科の森田美穂子助教に聞いた。
腫瘍崩壊症候群のリスク因子の例
▽12~72時間に発症
副作用の多くは、抗がん剤ががん細胞だけでなく、正常な細胞まで攻撃してしまうために起こる。一方、腫瘍崩壊症候群は、がん治療によってがん細胞が短時間に大量に破壊されることで起こる。「壊れたがん細胞から細胞内の物質が大量に放出される結果、血液検査で異常を示し、さらに腎不全などの臓器障害やけいれんなどの症状が表れます。抗がん剤の治療開始後12~72時間以内に発症することが多いとされます」
腫瘍崩壊症候群は以前から、白血病、悪性リンパ腫などの血液のがんに対する化学療法薬(従来の抗がん剤)の副作用として知られていた。「最近は、固形がんに対して、分子標的薬などの新しいタイプの抗がん剤を使用した場合にも発生することが分かってきました」
発生率は「抗がん剤使用患者の約1割と報告されています。うち6割が血液がん、残る4割が固形がん(臓器や組織などで塊をつくるがんの総称)です」。腫瘍崩壊症候群は抗がん剤のほか、ステロイド薬の投与や放射線治療でも起こることがあるという。
▽高尿酸血症治療薬などで予防
腫瘍崩壊症候群をいったん発症すると、急激に状態が悪くなる。「治療は難しく、全死亡率は2割とされ、検査値異常に加え症状を伴うと死亡率は7割とも言われます。がんそのものに対する抗がん剤治療を中止せざるを得ない場合もあります。このため、腫瘍崩壊症候群のリスクがあるがん患者さんには、抗がん剤治療の開始前から積極的な予防策が必要です」
リスクになる因子は、急性白血病、悪性リンパ腫などの血液がん、腫瘍の量が多い固形がん、抗がん剤の効果が高いがん(小細胞肺がんなど)、以前からある腎機能障害、感染、脱水など。リスクのあるがん患者には「水分や必要な電解質を十分量補液するとともに、腎不全の原因となる高尿酸血症の治療薬を投与するなどします」
「患者さんは何度もの血液・尿検査、点滴や水分摂取に負担を感じるかもしれません。治療が非常に難しい副作用の予防策と考えていただければと思います」と森田助教は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/08/12 05:00)
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