治療・予防

リハビリでゆっくり回復も
~会話、読み書き難しくなる失語症(京都協立病院 渡辺俊之医師)~

 会話や読み書きが困難になった状態を「失語症」という。脳卒中や交通事故などで脳の一部が損傷し、言葉の理解や表現に障害が起きたために発症することが多い。失語症とそのリハビリテーションについて、京都協立病院(京都府綾部市)脳神経内科の渡辺俊之医師に聞いた。

失語症の症状

 ▽「時計」と言えない

 渡辺医師によると、失語症の国内の患者数は約24万~50万人と推定され、原因として脳卒中が9割弱を占める。人間の言語機能の大半は脳の左半球が担っているが、その部位の血管が詰まるなどして損傷してしまう。

 そのため、「言いたい言葉をうまく言い出せない」「言葉を聞いて理解できない」「文字が読めない、理解できない」「文字が書けない」などの症状がさまざまな程度で表れる。例えば、時計を見て「時計」と言えない、複数の物から時計を選べない、相手が言った「時計」という言葉をおうむ返しできない、といった具合だ。

 ▽ゆっくり回復も

 治療は、脳卒中などの救急医療を受けた病院で、専門の言語聴覚士が失語症状を評価するところから始まる。症状に応じて、音読や復唱、短文を完成させるなどのリハビリを行う。

 症状が出始めた急性期を過ぎて退院した後は通院でリハビリを続けるが、症状が強ければ、集中的にリハビリを受ける「回復期リハビリテーション病院」に転院することもある。

 損傷した脳の周辺や反対側が言語機能を肩代わりするようになり、症状は回復していく。一般的には、発症から3カ月以内に速やかに回復するが、6カ月~1年、または5~10年かけて徐々に回復する患者も少なくない。「脳卒中の病変の部位や大きさ、発症年齢によって異なります。本人のリハビリへの意欲も影響します」

 「諦めずに言語リハビリに取り組んでください」と渡辺医師はエールを送る。うまく話せないことを苦にして人と話すのを避けると、回復が滞る。各地にある「失語症友の会」に参加し、日常生活の悩みなどに関して情報交換するのもよい。

 アルツハイマー型認知症のように、脳の神経細胞が徐々に失われていく病気で生じる失語症の場合は、「現在の言語機能の維持が目標となります」という。機能を維持するためには、家族や知人との会話を心掛けるのが望ましいと渡辺医師は助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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