治療・予防

大人もかかる百日ぜき
~うつさないためにも早期治療を(大阪大学微生物病研究所 堀口安彦教授ら)~

 せきがしつこく続く「百日ぜき」は一般的に、子どもの感染症だというイメージが強いが、大人もかかることが分かってきた。感染力が強く、周囲の人に簡単にうつってしまう。乳児が感染すると重症化し、命に関わることもある。大阪大学微生物病研究所(大阪府吹田市)分子細菌学分野の堀口安彦教授、平松征洋助教に話を聞いた。

百日ぜき患者の年齢別割合

 ▽ワクチンの効果は4~12年

 百日ぜきは、患者のせきやくしゃみの飛沫(ひまつ)を吸い込んだり、汚染物に触れたりすることにより、原因菌である百日ぜき菌が鼻や喉の粘膜に感染し、特徴的なせき症状を起こす。感染から1週間程度を経て、まず鼻水、微熱、くしゃみ、軽いせきといった風邪のような症状が出て、1~2週間続いた後、せきがひどくなる。特に子どもの場合、せき込んだ後に息を吸い込むタイミングで、喉から「ヒュー」と笛のような音がする「せき発作」を起こす。治療しないと、そのような状態が1カ月以上続くこともある。

 百日ぜきは、生後6カ月未満の乳児や小中学生がかかりやすい。しかし、「近年の調査で、30~40代を中心とした成人の感染者もいることが分かった。日本では、百日ぜきを含む4種混合ワクチンの定期接種が乳児期に行われますが、その効果は4~12年程度しか持続しない。そのため、接種から4年以上経過した人は、防御力が落ちている可能性があります」と堀口教授は指摘。追加のワクチンは自費で受けることができる。

 せき発作治療法の開発に道

 周囲の人にうつさないためにも、せきが長く続くようなら、早めに医療機関を受診し、治療を受けたい。百日ぜき菌に対しては、マクロライド系という種類の抗菌薬が効く。5~7日間服用すると百日ぜき菌が消え、周囲に感染させるリスクもなくなると考えられている。

 ただし、抗菌薬でせき発作は良くならない。一般的なせき止め薬やぜんそく発作で用いられる吸入ステロイド薬の効果も期待できない。このため、「特に子どもは、抗菌薬治療の開始後も、せき発作でつらい日が続くことになる。せき発作治療薬の開発が望まれます」(堀口教授)。

 こうした中、堀口教授らの研究グループは2020年、百日ぜきのせき発作を起こすマウスモデルを用いて、発作が起こるメカニズムを解明した。「患者のせき発作を緩和する治療法の開発につながる研究成果です」(同)としている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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