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感染者が過去最高を更新し続ける一方で、法律に基づく行動制限などの対策が取られない状態が続く新型コロナウイルス流行の第7波。8月初頭ではまだ重症者や死亡患者は増えていないが、感染者の増大からは少し時間差が生じるのはこれまでの経験から分かっている。しかも、これまで感染・重症者の少ないとされてきた小児にも拡大しており、専門医は「これまで以上の十分な警戒と対策が必要」と強調している。
新型コロナ/マスク姿で練習する指導員
◇死亡率「低くない」
「軽症とされるオミクロン株が流行の主流になった今年1~6月の死亡率は、季節性インフルエンザのほぼ倍の0.17%。初期の株に比べれば低いように見えるが、感染症としては決して低くない。流行の拡大で、より抵抗力の弱い高齢者や小児の患者が後半ほど増えてくることを考えれば、現状を軽視することはできない」。インフルエンザなど感染症に詳しい菅谷憲夫慶応大客員教授(小児科)はこう指摘する。もし現状のペースで感染拡大が続いた場合、延べ感染者数は少なくとも500万人以上は増加し、前述の死亡率を当てはめれば8千~1万人の死者が予想されるからだ。
さらに感染の拡大と患者の急増は医療機関の受け入れ能力を逼迫(ひっぱく)させることも確実で、問題を深刻化させるだろう。「そうなれば新型コロナ以外の患者の受け入れも制限され、十分な治療が受けられずに亡くなる人が出るのは、これまでの流行でも経験している」と菅谷教授は指摘する。
◇少ない自然免疫獲得者
今回の感染が過去の規模を大きく上回った背景には他国に比べて感染により獲得する自然免疫の所持者が少ないことがある、と菅谷教授は説明する。既存株を対象とする現行の新型コロナワクチンは、オミクロン株に対しての重症化予防効果はともかく、感染・発病予防効果はそれほど長期間期待できないとされている。一方、感染により獲得された自然免疫は双方でワクチンにより獲得した免疫より強く、長期間持続すると言われている。
「現在感染対策を緩めている欧米などは初期に高い感染率を示していることから、およそ総人口の30~50%の人が自然免疫を獲得していると推定できる。この人たちが社会全体の免疫を高め、現在の比較的落ち着いている感染状態をもたらしている、と考えられる」と菅谷教授は分析。今までの厳しい対策の成果から、総人口の10%前後と感染者の少なかった日本では、皮肉にも、今後も厳しい警戒が必要と訴えている。
◇夏休み中も小児対応緩めずに
感染初期から「小児への感染率が低い」「感染した小児は重症化しにくい」と言われてきた新型コロナだが、今回の流行では小児例が増加し、急性脳症などの重症例、死亡例も報告されている。このため小児向けワクチンの集団接種を再開させるなどの対策を取る自治体もある。
「もともと感染症というものは、抵抗力の弱い乳幼児と高齢者が重症化しやすいと言われており、実際米国ではこれまでに1000人以上の小児が新型コロナで亡くなっている。これまでの低感染状態がある種の幸運だったと考え、学校での集団生活が無くなる夏休み中も感染症の基本に立ち返って対応していく必要がある」と菅谷教授。ワクチンの積極的な接種、手指消毒の徹底やマスク着用の励行を呼び掛けている。(喜多壮太郎)
(2022/08/05 05:00)
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