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化学物質過敏症は、空気中を漂う化学物質を吸い込むことで、さまざまな症状が表れる病気。自身も症状に苦しみながら、専門外来を設けて治療に当たる典子エンジェルクリニック(大阪府堺市)の舩越典子院長に聞いた。
化学物質過敏症を引き起こす主な製品と症状
◇ある日突然発症
症状は呼吸困難、くしゃみ、鼻水、目の痛み、吐き気、頭痛、関節痛など多岐にわたる。いったん発症すると、少量を吸い込むだけで症状が出るようになる。「原因となる化学物質に接触した途端に症状が表れ、その場から離れると少しは落ち着くものの、数時間は症状が続くのが特徴です」と舩越院長。
消毒液、農薬、殺虫剤などの生物を殺す成分を含む製品、洗剤、柔軟剤、芳香剤などの除菌・抗菌・香り成分を含む製品で起こる頻度が高い。「私はあるとき採血しようと患者さんに顔を近づけると衣服から何かの香りがして、直後にひどくせきが出て呼吸困難に陥りました。同じことが1週間以内に再び起こり、その患者さんたちが同一の柔軟剤を使っていたと分かりました」と自身の経験を語る。
◇治療で改善可能性も
化学物質過敏症の発症原因は未解明だ。従来は、花粉症と似て、生活の中で触れる化学物質の量がその人の限界値を超えると、突然発症すると考えられ、原因となる物質を身の回りから遠ざける対策が重要視されていた。
そんな中、新たな知見も出てきている。「東京女子医科大学付属足立医療センター麻酔科の平久美子医師は、何らかの理由により、末梢(まっしょう)神経または脊髄レベルの異常が脳に影響を与え、化学物質への過敏な反応が生じていると考え、末梢性神経障害性疼痛(とうつう)の薬(リリカ、タリージェ)を用いた治療を行っておられます」と舩越医師は語る。
「私も長く症状に苦しみ、外出時に防毒マスクを着用したこともあるほどでしたが、平医師の治療を受け改善しました。症状を引き起こす柔軟剤のにおいを嗅いでも頭痛やふらつきなどの症状が出なくなりました」。治療効果は検証中だが、防御するだけでなく、治せる可能性があるのは、患者にとって希望となるだろう。
他には、食生活でなるべく農薬などの化学物質を取り入れないこと、体の排せつ機能を高めることも重要。特に、不足しがちで代謝に関わる亜鉛やビタミンDなどの摂取は症状改善にも有効な可能性があるという。
「まずは何より、こういう病気があること、治療によって改善可能性があることを知っていただきたい。また自宅だけでなく、職場などでも原因となる可能性のあるものを使わないなど、周囲の理解と協力も欠かせません」と舩越院長は指摘する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/11/05 05:00)
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