治療・予防

テレビの「ながら見」はしないで
~惨事報道とメンタルヘルス(目白大学 重村淳教授)~

 昨今、災害や戦争、殺人事件などの惨事が頻繁に報道されている。直接被害に遭わなくても、惨事を伝えるテレビやインターネットの衝撃的な映像を視聴することで、心の健康(メンタルヘルス)を害してしまうこともある。精神科医で日本トラウマティック・ストレス学会理事を務める、目白大学保健医療学部(さいたま市)の重村淳教授にメンタルヘルスの悪影響を防ぐための注意点などを聞いた。

惨事報道を視聴する時の注意点

 ◇不安、いらいら、不眠

 惨事報道の視聴による影響について、重村教授は「衝撃的な映像を見たり、爆発音などが耳に飛び込んできたりすることへのストレス反応で、不安やいらいらを感じるようになり、気持ちが沈み、楽しめないなどの不調を起こすことがあります」と説明する。

 ストレス反応がより強い場合は「衝撃的なシーンが常に頭に浮かんだり、それが原因で悪夢を見たり、眠れなくなったりします。不眠は分かりやすいサインかもしれません」。さらに動悸(どうき)吐き気めまいなどの症状が出る人もいるという。

 ◇視聴時間の制限を

 特にメンタルヘルス不調を起こしやすい人もいる。「過去にトラウマ、つまり心の傷になるようなつらい体験をした人、現在精神の不調がある人、子どもには注意が必要です」

 視聴の仕方によって影響を受けやすくなる。「同じ内容の映像を繰り返し見ること、長時間の視聴、家事などをしながらの『ながら見』の三つが問題。ながら見は、不用意に衝撃的な映像や音にさらされ、過剰な刺激になるリスクが高いです」

 さらに「親がながら見している映像を子どもも目にすると、知らないうちに子どもの心が傷ついていることがあり、危険です」と指摘する。

 こうした良くない状況を防ぐためには、「視聴時間を最小限にする、繰り返し視聴しない、ながら見しないこと。残虐な映像がそのまま流れることがあるインターネット交流サイト(SNS)の視聴の制限も必要です」

 心身の不調は一時的であることが大半だ。「衝撃的な事件があると、視聴し続けて、生活が乱れがちになります。日常生活を取り戻し、気分転換を図ることも大切です」と重村教授は呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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