治療・予防 2024/11/21 05:00
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春、肌に当たる風がぬるみ、外を歩くのが楽しみになるはずなのに―。くしゃみや鼻水、目のかゆみが邪魔をする。今年も気が重くなる季節がやってきた。花粉症だ。一部の地域を除いて飛散量は例年より多いと予想されており、専門家は「症状がひどくなる前に治療を始めてほしい。我慢しないで、早めに対処しよう」と話す。
子どもも花粉症になる。花粉飛散時期に透明な鼻水が続いたり、鼻づまりで口を頻繁に開けたりする様子が見られたら、花粉症の可能性がある
◇有病率は4割
そもそも花粉症とはアレルギー性鼻炎の一種で、体内に入ってきた花粉をくしゃみや鼻水といった方法で体が外に追い出そうとする反応。本来なら体にとっていい反応だが、過剰になってしまうと、上記のつらい症状に悩まされ、花粉症と診断されることになる。
耳鼻咽喉科の学会調査によると、日本国内の花粉症の有病率は2019年で約40%。調査を開始した1998年(約20%)から20年間で2倍になった。
これは症状を訴えた人の数で、アレルギーの素因を持っていてまだ発症していない人が大勢いるという。「症状が出たら、重症化する前に初期療法を受けてほしい」と後藤穣・日本医科大学准教授は呼び掛ける。
◇初期対応で乗り切ろう
主な原因であるスギ花粉は2月中旬が飛散開始日とされるが、年明けから少量飛び始めているという。毎年症状に悩まされている人は、早めの治療がおすすめだ。
医療機関の受診はもちろんだが、市販の薬を使ってもいい。「副作用が起きにくいため、スイッチOTC薬(一般用医薬品)と呼ばれる、医療用医薬品から市販薬に転用した物を選ぶのがいい」と後藤准教授。それ以外の薬で注意が必要なのは、副作用で眠気が出るタイプ。眠気を抑えるためにカフェインなどが一緒に配合されている場合があるといい、「薬剤師と相談して購入するのが安心だ」(後藤准教授)。
◇それでも駄目なら
薬は対症療法で、根本の治療にはならない。しっかり治したいという人はアレルゲン免疫療法に挑戦する選択肢もある。
アレルゲン免疫療法は、アレルギーの原因であるアレルゲンを少しずつ患者に投与し、体を慣らすことで症状の緩和や体質改善が期待できる。平均3~5年かかり、定期的に投与を受けなければならない。
東京都内に住む60代女性は20年7月、慢性副鼻腔(びくう)炎が悪化し耳鼻科を受診。春先に花粉症の症状にも悩まされていたため血液検査を受けると、スギ花粉とハウスダストにアレルギーがあることが分かった。
この女性はすぐに免疫療法をスタート。2週間に1度のペースで、左右両腕への皮下注射を22年10月ごろまで続けた。しかし、21、22年とも花粉飛散時期に効果を感じられなかったのに加え、多忙だったために病院から足が遠のき、途中で挫折してしまった。23年の飛散期を前に「もう少し続けていればよかった。まだ症状は出ていないが、少しでも不快だと感じたら我慢しないで受診しようと思う」と話す。
◇他の選択肢も
皮下注射や、舌の下に薬を置き一定時間後に飲み込む舌下免疫療法といったアレルゲン免疫療法のほかに、レーザー手術や抗体療法といった方法もある。
レーザー手術は鼻の粘膜をレーザーで焼き、症状を和らげる。持続性が数カ月のため、花粉飛散前に毎年受け、ピークを乗り切る。抗体療法は特に症状の重い人向けで、治療を受ける際いくつか制約がある。
帰宅時は服に付いた花粉を玄関で落とし、室内に入るのを防ぐといい
まれに注意が必要なのは、「1回の注射で治る」などとうたわれている類い。長期間持続するタイプのステロイド薬を投与することから、反動で表れる副作用も重くなる可能性がある。後藤准教授は「症状が軽くなるのは事実だが、推奨はできない」と注意を呼び掛けた。
◇重要なセルフケア
毎日の生活の中で、自分を花粉から守る行動を習慣化するのも重要な対策だ。例えば、正しいサイズのマスクを正しく着用したり、眼鏡や花粉が付きにくい服を着用したりする。帰宅したら、玄関で髪や服に付いた花粉を払って落とす。意外と簡単に、花粉が室内に持ち込まれるのを防げる。
口コミで話題になった食品などは検証がまだ不十分のため、確実な効果は期待しない方がよさそうだ。症状に合った薬や治療が、この憂鬱(ゆううつ)な季節をできるだけ快適に過ごす手助けをしてくれる。早めの対策で迎え撃ってほしい。(柴崎裕加)
(2023/02/07 05:00)
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