治療・予防

風邪やアレルギーではない鼻水
~加齢性鼻炎(日本医科大学武蔵小杉病院 松根彰志教授)~

 鼻水に悩まされると、風邪やアレルギー性鼻炎を疑いたくなる。しかし、発熱や倦怠(けんたい)感、目のかゆみなどはなく、鼻水だけというケースが加齢に伴い起きる場合がある。

 「個人差はありますが、60歳を過ぎた頃から出始める加齢性鼻炎(老人性鼻漏)です。鼻の中の粘膜の萎縮が原因で起こります」と、日本医科大学武蔵小杉病院耳鼻咽喉科の松根彰志教授は話す。

生理食塩水で行う1日2~3回の鼻うがい

 ◇鼻水ではなく結露

 鼻の粘膜は加温・加湿器の役割を担っており、呼吸の際に鼻を通過する空気の温度と湿度を適切に調整し、肺に送る。例えば米国のアラスカのような極寒の地でも、冷たい空気を粘膜が温める。

 ところが若い頃に弾力のあった粘膜も、加齢に伴い薄く固くなり、機能も低下しやすい。萎縮した粘膜は、鼻から吸った空気の温度を上げることができず、鼻腔(びこう)の温度が下がる。空気はその後肺などの下気道で温められ加湿されて鼻に戻るが、鼻腔で冷えるため、空気中の水分が鼻水のようになり、だらだら外に出てくる。「窓の結露現象と同じです」

 本来の鼻水は粘膜の中にある鼻腺(びせん)という組織から分泌される。加齢性鼻炎の場合、見た目は鼻水だが結露のようなものなので、鼻水を止める薬に効果はない。

 松根教授の下に訪れる患者は、クリニックなどで処方された鼻炎や蓄膿(ちくのう)症の薬では効果がなかったために受診する人が圧倒的に多いという。「加齢による生理的な変化が原因で起きる症状なので、病気としての対処ではなく、手入れが必要です」

 ◇温めて自分でケア

 手入れのポイントは、温めることだ。例えば39~40度に温めた生理食塩水で鼻の中を1日2~3回洗う「鼻うがい」。生理食塩水は、1リットルの水に対して約9グラムの食塩を混ぜれば自分でも作れる。市販の鼻うがい用の器具を使うのも良い。続ければ風邪の予防にもなる。

 また、38~40度程度の湯で足湯や全身入浴も効果的だ。全身入浴の際は、湯気を鼻から吸うことを意識するとより良い。マスクも役立つ。自分の息がマスクの中で、加温加湿機能を果たすためだ。さらに八味地黄丸(はちみじおうがん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、麻黄(まおう)など、体を温める効果のある漢方薬を推奨する医師もいる。

 「いずれにしても鼻の粘膜の弱っている機能を、普段のお手入れで補ってあげることが大切です。症状がゼロにはならなくても、お手入れを続けることで緩和されていくと思います」(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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