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近年、10~20代の若者たちの間で、せき止め薬や風邪薬など市販薬の乱用、いわゆる「オーバードーズ(過剰摂取)」が増えている。
厚生労働省の研究チームで実態調査を行ってきた、国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)精神保健研究所薬物依存研究部の松本俊彦部長は「市販のせき止め薬や風邪薬の多くには、麻薬や覚醒剤と似たような成分がわずかに含まれています。オーバードーズにより臓器障害や死亡するケースもあります」と警鐘を鳴らす。
10~20代の薬物使用の推移
◇女性、非行歴なし多く
研究チームの報告によると、10~20代の薬物使用の内訳は、2014年は危険ドラッグが48.0%を占めていたのに対し、16年には市販薬が25.0%と台頭し、22年には65.2%と右肩上がりだ。
14年の法改正で危険ドラッグの取り締まりが強化された結果、常用者の一部がドラッグストアで手に入る市販薬に流れたと考えたくなるが、両者はまったく別の特徴を持つ。「危険ドラッグの常用者は大半が男性、低学歴、非行歴ありなどでしたが、市販薬では女性、現役学生または高卒以上、非行歴無しが多いという違いがあります」
せき止め薬や風邪薬の大半には、メチルエフェドリンという気分が高揚する成分と、ジヒドロコデインという気分を抑制する成分が含まれている。これらは気管支拡張などの薬効成分が認められており、適正な用量を守れば問題はない。
しかし依存性があり、オーバードーズによる一時的な気分の高揚や鎮静が得られるが、肝臓などの臓器障害、呼吸や心臓の停止、死に至る危険がある。
◇心理的苦痛の緩和
市販薬乱用の背景は、「多幸感を得るためではなく、つらい気持ちを紛らわしたいというケースがほとんど」。学校でのいじめ、家庭内暴力や両親の不和などから、安心、安全に生きられる居場所が限定され、つらさを紛らわせるためにオーバードーズを繰り返す。こうした若者の多くはリストカットの常習者でもあるという。
そのため、市販薬の乱用を知った友達や大人が非難や叱責をしてしまうと逆効果だという。「寄り添ってあげることが大切です。『よく生きていてくれたね』『打ち明けてくれてありがとう』という言葉を掛けてあげてください。すぐに薬をやめることは難しいので、薬物依存の専門家(精神科医)に相談しましょう」と松本部長は助言している。
厚労省に対して市販薬の販売規制強化を求める声はかねて上がっており、4月1日から販売個数制限や薬剤師などからのリスク情報提供などの対象となる市販薬が増えた。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/10/08 05:00)
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