覚醒剤〔かくせいざい〕 家庭の医学

 覚醒剤を使用すると、まもなく活力が増し、自信が増大し、幸福感に満ちた状態になります。この効果は数時間でなくなり、その後は疲労感や不快感におそわれるようになります。
 このように一時的に精神作用が活発になる効果があり、第二次世界大戦後の一時期、社会で広範に使用されたことがありました。現在は覚醒剤取締法により、使用、所持、譲渡などが禁止されています。

■覚醒剤依存症
 覚醒剤を反復して使用することでなります。薬物の覚醒効果は、使用を重ねるにしたがって急速に落ちてきます。そして同じ効果を得るには使用量をふやさなくてはいけなくなります。これを耐性といいます。耐性がつくられる結果使用量が急速にふえ、ますます薬から離れにくくなるのです。
 依存症になると、意欲がなくなったり感情が不安定になったり不眠が続いたりといった症状が出てきます。また食欲がなくなり、げっそりとやせてしまいます。薬を入手するお金欲しさから犯罪に至り、男性では恐喝や強盗、女性では売春につながることが多いようです。長く使用すると、人間関係がどんどん狭くなり、最終的には売人とのつながりだけになってしまいます。
 なお、覚醒剤にはアルコールのような身体依存(同じ量をのんでも酔いにくくなる、急にやめると禁断症状がでるなど)はありません。

■覚醒剤精神病
 覚醒剤をくり返し使用すると、徐々に疑い深くなり、幻覚、妄想が出てきて統合失調症によく似た状態になります。幻覚体験はなまなましく、妄想は被害妄想が主です。症状が激しく、しばしば入院治療を必要とします。
 覚醒剤を中止するとこのような症状はよくなりますが、薬物を再開すると容易に症状が再燃します。しかも使用量がかなり少なくても、また薬の再使用以外の原因でも再燃することがあります。なかにはささいなストレスがきっかけになることもあり、このような現象をフラッシュバックと呼んでいます。

【参照】中毒:覚醒剤、麻薬、その他興奮薬

(執筆・監修:高知大学 名誉教授/社会医療法人北斗会 さわ病院 精神科 井上 新平)
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