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薬の個人輸入はこんなに危険です 
「今はネットで…」の落とし穴 専攻医・渡邉 昂汰

 個人輸入で薬が買える某サイトが話題です。プレドニゾロン、メトホルミン、フィナステリドなどを見かけましたが、それぞれ、ぜんそく治療薬、ダイエット薬、男性型脱毛症治療薬として販売され、人気を博しています。

 そもそも本物の薬が届くのか、という問題点もありますが、たとえ正しい成分の薬が届いたとしても、自己判断での服用はとても危険なことです。

薬局で取り扱いのない医薬品がネットなどで手に入るからといって、安易に服用すると、その後に予期せぬことが起こる可能性があります【時事通信社】

薬局で取り扱いのない医薬品がネットなどで手に入るからといって、安易に服用すると、その後に予期せぬことが起こる可能性があります【時事通信社】

 今回は、プレドニゾロンという薬を例にして説明していきましょう。
 
 ◆プレドニゾロンとは

 プレドニゾロンは、いわゆるステロイドのことで、生体内で副腎から分泌される、生命維持に必須のホルモンです。

 ざっくり言ってしまえば、体の調子を整える効果や、免疫の暴走を抑える効果があります。

 飲み薬の他にも、点滴、吸入、塗り薬があり、われわれ医療者は病気によって使い分けています。

 正しく使えばとても有益な薬で、膠原(こうげん)病、ぜんそく、副腎不全、がん、皮膚炎など、いろんな病気の治療に使われます。

 その半面、白内障、高血糖、骨粗しょう症、感染など、さまざまな副作用が起こるリスクがあります。
 
 ◆使用後に起こり得ること

 病院では、副作用が出ないように、必要に応じてさまざまな予防策を講じて処方しています。個人使用で副作用の発見が遅れた場合、手術や一生の通院が必要になるかもしれません。

 また、病気の中には、治療前にしっかり診断をつけることが要となるものがあります。診断前に、間違った使用法でプレドニゾロンを使うと、確定診断がつけられず、完全に治るまでに通常の何倍もの時間がかかってしまいます。

 そして、同じような症状に見えて、病態が全然違う病気はたくさんあります。その病気は、プレドニゾロンで治らないどころか、悪化するかもしれません。

 「今はネットで調べられるから」「病院受診は面倒だから」と安易に自己診断、自己治療に走るのはやめてください。また、美容目的などで、本来の使い方と異なる使用をするのも大変危険です。

 薬局で取り扱いのない医薬品は、専門家の診断の下で正しく使いましょう。

(了)


 渡邉 昂汰(わたなべ・こーた) 内科専攻医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。

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