治療・予防

痛む部位に貼らないことも
~全身作用型の貼り薬(福島県立医科大学付属病院 二階堂琢也准教授)~

 痛み止めの貼り薬は、肩や首など「痛いところ」に貼るのが通常の使用法だが、肩が痛くても、腰に貼るような「全身作用型」の貼り薬もある。福島県立医科大学付属病院(福島市)整形外科の二階堂琢也准教授に、全身作用型の薬について話を聞いた。

鎮痛の貼り薬。全身作用型と局所作用型

 ◇血液介し全身に効果

 通常の鎮痛貼り薬は、有効成分が皮膚から浸透し、その部位の痛みを和らげる「局所作用型」。医師が処方する医療用医薬品の他、薬局やドラッグストアで処方箋なしに購入できる一般用医薬品として多くの製品が発売されている。

 全身作用型は、皮膚から浸透した有効成分が血液を介して全身に移行して鎮痛効果を表す。「複数の箇所に痛みがあっても、部位ごとに貼る必要はありません」。血液中の薬物濃度が長く安定するので、3日ごとや7日ごとに貼り替える薬もある。

 がんの痛みを和らげる目的で20年ほど前から幾つかの薬剤が使われている。2010年以降、他の慢性疼痛(とうつう)、腰痛症、膝などの変形性関節症にも対象が広がった。いずれも処方薬としてのみ承認されている。

 ◇薬ごとに所定の部位

 貼る部位は、それぞれの薬が血液中に移行する状況を調べたデータを基に、胸、腹、上腕、背中、腰などと決まっている。例えば、腰痛症の患者なら腰でも構わないが、膝の痛みでは膝に貼らない。

 全身作用型で最も新しいジクロフェナクナトリウム経皮吸収型製剤(製品名ジクトルテープ)の臨床試験で、腰痛症患者が貼った部位は腰が約25%、太もも、腹、上腕がそれぞれ15%前後だった。

 全身作用型も局所作用型と同じく、貼った箇所のかゆみ、赤みなどの副作用に気を付ける。「1回の所定枚数を超えて全身作用型を貼ると、血液に移行する量が過大になり、その鎮痛薬を内服したときのような副作用の恐れが増します」

 一方、痛いときだけ貼ると血液中の濃度が安定せず、効果が十分に現れない可能性もある。医師の指示の下、規則正しく使うことが必要だ。

 「処方されたら、貼る部位や貼り替え時期など、使い方を改めて確認するとよいでしょう」と二階堂准教授はアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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