治療・予防

開胸術後疼痛症候群
~手術後に痛み続く(オクノクリニック 奥野祐次総院長)~

 がんや心臓病などで開胸手術を受けた後、手術による傷口は治っているにもかかわらず、長期間にわたって傷口やその周辺に痛みや不快感が残る「開胸術後疼痛症候群(PTPS)」。オクノクリニック(東京都港区)の奥野祐次総院長に聞いた。

開胸術後に痛みや不快感が残るPTPS

開胸術後に痛みや不快感が残るPTPS

 ◇2~4人に1人

 開胸手術では胸の皮膚や肋骨(ろっこつ)、筋肉などの一部を切り、患部を開く。手術後に痛みが出るが、通常は時間の経過とともに治まっていく。ところが、PTPSは術後2カ月以上が経過しても痛みや不快感が持続する。原因は解明されていないが、手術によって生じた炎症が長引いて神経を刺激し、症状を引き起こしている可能性などが考えられている。

 「1~2年以上と長期にわたり悩まされる人もいます。うずくような痛み、ピリピリした感覚、締め付けられる感覚といった症状を訴える人が多いです」。痛む箇所が傷口や周辺にとどまらず、広い範囲に及ぶこともあるという。

 PTPSの発生頻度は低くない。「調査によってばらつきはあるものの、開胸手術を受けた人の25~50%程度に起こると言われています」。女性の方がやや多く、年齢別では40~50代以降に多い。

 ◇新たな治療も登場

 PTPSには一般的な消炎鎮痛薬はあまり効果がなく、神経障害性疼痛薬(プレガバリン)や神経の興奮を抑える薬(ガバペンチン)などが用いられることが多い。これらの内服薬を使ってもよくならない場合、神経の付近に直接、麻酔薬を注射する神経ブロック注射が行われることがある。

 長引く炎症を鎮めるための治療も試みられている。通常、傷が治る過程で一時的に血管(新生血管)が増えるが、組織が修復されると新生血管はなくなる。「ところが、新生血管がなくならずに残ることがあります。そこから周囲に痛み物質が漏れ出して、いつまでも炎症を長引かせると考えられています」

 公的医療保険が効かない自由診療で治療効果は検証中だが、同クリニックでは、血管内カテーテル治療を実施している。腕や足の付け根などから細いカテーテルを入れ、血管の中を通して患部に到達させ、先端から粉末状の抗生物質を投与して新生血管をふさぎ、新生血管の消失を目指す。

 「当院では通常の治療で効果がなかった患者さんに実施し、7割程度で改善が見られています」と奥野総院長は語る。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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