治療・予防 2024/11/22 05:00
ドナーの食べたもので輸血副反応?
~アレルギー患者で活性化(信州大学医学部付属病院 柳沢龍准教授)~
厳しい残暑の中、寝付けない、寝苦しい、翌朝になっても疲れが取れないという人は多いようだ。夏の疲れがたまった9月後半、10月を乗り切るためにはしっかり寝たいが、具体的にどうしたらいいか。専門家に対策を聞いた。
「いい睡眠を取る第一歩は、生活リズムの見直しから。夏の疲れを悪化させないで」と話す芦澤裕子医師
◇夏に陥りやすい寝不足の原因
「今年は特に、『暑いせいか眠れない』と相談に来る患者が多い」と話すのは、市川メンタルクリニック(千葉県市川市)の院長で精神科が専門の芦澤裕子医師。夏特有の睡眠不足の原因として、睡眠環境を整えるのが難しいことを挙げる。「夜間も気温が下がらない日は眠りが浅くなる。冷房を使用しても室内の温度・湿度の調節がうまくできないこともある」
体内の要因もある。心身を緊張・興奮させる交感神経と、リラックスさせる副交感神経からなる自律神経。両者はシーソーのようにバランスを取りながら、体温調節や消化など体のさまざまな機能をつかさどっている。シーソーの揺れ幅が大きいほど、副交感神経が優位になったときに深く眠れ、疲れが取れやすい。
夏は自律神経が絶え間なく働くため、疲労が蓄積して機能が弱まる。その結果、シーソーの揺れ幅が普段と比べ小さくなる。副交感神経の働きが弱いと、夜になっても眠くなりにくく、寝ても何度も起きてしまう。芦澤院長は「寝ている間に日中の体の疲れが取れない。どんどん疲れがたまり活動が低下すると、自律神経はさらに働きが鈍り、余計に寝にくい状況に…と、悪循環になりがちな季節」と指摘する。改善に向け、芦澤院長が挙げたポイントは入浴、運動、食事、起床時間。それぞれについて解説したい。
◇風呂にゆったり15分
ぬるめの湯に15分以上漬かり、深部体温をじっくり上げると入浴後、次第に体表面が放熱し、1時間ほどで体温が下がる。ここが眠りに就きやすいタイミングとなる。
寝る1時間前からはスマホを見ない。ストレッチをするなど、心身をリラックスさせて副交感神経を優位にすることが大切だ。
忙しくてこの入浴時間を確保できない場合は、入眠30分ほど前にさゆをゆっくり飲めば、深部体温を上げられる。夕食は入浴前に済ませておく方がいい。入浴後だと「血液が消化器官に集中して熱がこもり、放熱できなくなる」(芦澤院長)。
◇体を動かすのは朝
朝の散歩をぜひ日課にしてほしい。循環が促され、体のさまざまな機能がスタートしやすくなる上、体力も付いて夏バテ防止に。暑い間は日中に運動すると危険なため、朝がお勧めだ。芦澤院長は「散歩は交感神経が活性化するため、夜はしない方がいい。夜しか時間が無い人は、夕食前に行ってほしい」とアドバイスする。在宅勤務が多い人や、普段外出する機会があまりない人は、朝に体を動かすことを習慣化するとよさそうだ。
◇バランスよく食べる
いろいろな種類の食材を、バランスよく取ることを心掛けてほしい。特に体を構成するタンパク質、細胞を動かすミネラルを意識して取りたい。芦澤院長は「1人暮らしの人は外食やコンビニ弁当などが多く、栄養バランスが悪くなりやすい。現代の食事は炭水化物に偏りがちなため、改善が難しいと感じたら、サプリメントでまとめて取ってもいい」と話す。
朝昼晩それぞれ、毎日同じ時間帯に取ることも大事だ。「同じ時間に食事を取ると、生活リズムが形成される。いい睡眠には体内時計のリズムが整っている必要がある」と芦澤院長。
朝日を浴びることが睡眠ホルモン「メラトニン」分泌の準備運動に。14時間ほどたつとメラトニンが眠りにいざなう仕組みのため、起床時刻は一定にしたい
◇起床時間を一定に
リズムとは何か。体を調節するホルモンは多種多様で、分泌されるタイミングや種類は太古の昔から太陽の位置によって決まっている。朝起きるとコルチゾールというホルモンが分泌され、活動開始のスイッチが入る。毎日同じ時間に起床しホルモンが分泌されれば、体内時計がいいリズムを刻むきっかけになる。「現代人はこのリズムを自ら崩している。可能なら毎朝同じ時間に起床し、休日もなるべく同じくらいの時間に起きるよう意識してほしい」と芦澤院長は呼び掛ける。
起床後には太陽の光を目の中に入れよう。目の裏あたりの脳内に、体内時計の機能の中枢である視交叉上核(しこうさじょうかく)という神経核があるからだ。光の刺激で体内時計がリセットされ、「一日が始まる」と体が認識するという。
朝食で栄養を補い、運動して体の循環を活発化させ、疲労物質を排出するとともに体力もアップ。芦澤院長は「夏の暑さで体がダメージを受けるのは仕方がない。ただ、いかにダメージを受けにくい体にするかが、夏バテによる睡眠不足を防ぐカギになる」と説く。
◇ぐっすり眠るための習慣付けを
不眠に悩む人は、何から手を付けたらいいか不安を感じるかもしれないが、芦澤院長は「自分ができることから、やれる範囲で適度に行えばいい。頑張る必要はない」と話す。お勧めは、寝る1時間前からスマホを触らないよう習慣付けることだという。最も着手しやすく、効果もあるのでやってみてほしい。
他方、過度の運動は避けたい。就寝中に筋肉がけいれんする「こむら返り」を起こすなどし、むしろ眠りを妨げる。
寝不足だからといって、普段より早めに布団に入るのもやめたほうがいい。芦澤院長は「『睡眠時間を長く取らなくてはいけない』と強く思うと、逆に緊張したり疲れたりする。仮に寝付いたとしても、浅い眠りになり中途覚醒することもある」と話す。日中、過度に眠くならなければ、睡眠はほぼ足りていると言っていい。
また、よく聞く「午後10時から午前2時は睡眠のゴールデンタイム」について、芦澤院長は「成長ホルモンが分泌されるのが寝始めてから4時間と言われているが、午後10時からと決まっているわけではない。眠りに就いてからの3時間が深い眠りならそんなに気にしなくても大丈夫」と説明する。
残暑が終息するまで元気で過ごすためには、質のいい睡眠が大切。日々の生活の中で、怠りなく対策を取ってほしい。(柴崎裕加)
(2023/09/13 05:00)
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