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鼻副鼻腔乳頭腫(びふくびくうにゅうとうしゅ)は鼻の中にできる良性の腫瘍だ。鼻詰まりなどの症状が見られるが、東京慈恵会医科大学(東京都港区)耳鼻咽喉科学教室の由井亮輔助教によると、「症状からこの病気を疑うことは難しいです。中にはがん化するタイプもあり、早期診断、治療が重要です」と指摘する。
鼻腔と副鼻腔
◇片側の症状に注意
鼻の穴(鼻腔)や、鼻腔の周囲にある隙間(副鼻腔)にはさまざまな良性腫瘍が発生する。代表的なものの一つが鼻副鼻腔乳頭腫で、鼻の粘膜に不規則な形をした膨らみができるのが特徴だ。発症の原因は、ヒトパピローマウイルス感染との関連などが報告されているが、明らかではない。
鼻副鼻腔乳頭腫は腫瘍組織の構造などから内反性乳頭腫、外反性乳頭腫、オンコサイト型乳頭腫の3タイプに分かれる。このうち内反性乳頭腫は再発やがん化が起こりやすいといわれる。海外の研究報告では内反性乳頭腫の発症率は年間10万人に0.2人~1.5人で、中年以降の人に発症しやすく、発症率は男性が女性より2~5倍高いという。
「腫瘍は片側の鼻腔や副鼻腔にできる場合が多く、片側だけの鼻詰まりや出血は腫瘍による症状の可能性があります。しかし、初期には自覚症状が乏しく、発見が遅れるケースもあります」
◇AI診断法を開発
耳鼻咽喉科では鼻副鼻腔乳頭腫の疑いがあると鼻腔内視鏡検査などが行われるが、別の病気である鼻腔ポリープ(鼻茸=はなたけ=)との鑑別が難しいケースが少なくない。また、確定診断には腫瘍組織を採取して行う病理検査を要するが、1週間程度の時間がかかる。そこで由井助教らは、迅速で精度の高い診断につなげるため、人工知能(AI)を使った高精度の診断モデルを開発し、実用化に向けてさらなる研究を進めている。「AI診断が普及すれば、より的確な診断が可能になるでしょう」
鼻副鼻腔乳頭腫の発症率は決して高くはないが、再発やがん化を防ぐためにも早期に診断、治療を受けることが大切だ。治療では内視鏡手術で腫瘍を摘出。術後3~5年は内視鏡検査などを受けながら経過を観察する必要がある。
「鼻詰まりや鼻の出血が続くなどの気になる症状があれば、まずは早めに近くの耳鼻咽喉科を受診しましょう」と由井助教はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/02/17 05:00)
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