治療・予防 2024/11/21 05:00
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妊娠した女性は歯科受診をためらうケースが少なくない。診療の途中で具合が悪くなる心配があるほか、エックス線の照射や麻酔の使用などが胎児に何らかの悪影響を及ぼしかねないと懸念するからだ。これに対し、専門家は胎児にはほぼ影響しないと説明。妊娠するとホルモンのバランスが変化し、虫歯や歯周病などのリスクが高まるとした上で、つわりが落ち着く安定期に歯科健診を受けるよう推奨している。
妊娠すると虫歯などのリスクが高まる(イメージ)
◇エックス線、麻酔、飲み薬を不安視
日本歯科大学の鈴木麻美准教授によると、妊娠期は「口の中も大きな変化が起こっている」。歯茎からの出血や唾液の減少、口内の粘つき、口臭といった症状が表れやすく、こうした状態が続くと虫歯や歯肉炎、歯周炎になる危険性が高くなる。発症すると、場合によっては低体重児出産や早産につながる恐れもあるという。
一方、妊婦はいろいろな面で神経質になりがちだ。胎児を大事にしようと意識するあまり、歯科診療についても過度に不安視するケースが見られる。例えば、日本歯科大付属病院のマタニティ歯科外来を訪れた患者の間では、診療中に具合が悪くなったり、エックス線撮影や麻酔・飲み薬が胎児・授乳に影響したりすることへの危惧が聞かれた。不安な気持ちがあると、必要な診療から遠ざかる事態になりかねない。
◇産科医と連携し安全確保
こうした懸念に対し、鈴木准教授は「一番に心掛けているのは妊婦の不安を取り除くこと。産科医と連携し、歯科治療ができる状態か、使える薬は何かなどを聞きながら治療を進める」と安全性を強調する。アレルギーなど個々人の体質も考慮し、麻酔・飲み薬にどの薬剤を使うかを選択する。しかも、使用は必要最小限にとどめるとしている。
鈴木麻美准教授
エックス線撮影に関しては「写真から得られる情報は非常に重要だ」とした上で、胎児への影響はほとんどないと説明する。鈴木准教授によると、特定の歯を調べるための局所的な「デンタル撮影」の被ばく線量は約0.01ミリシーベルトで、国内の普通の生活で浴びる1年間の放射線量(平均1.5ミリシーベルト)の150分の1程度。すべての歯を写す「パノラマ撮影」でも約0.03ミリシーベルトで、50分の1にすぎない。さらに、撮影時には放射線を遮る防護エプロンを使用するため、「被ばく量は非常に少量で、安全と考えていい」と話す。
◇出産後は多忙、安定期に受診を
妊婦の健診実態はどうなっているのだろうか。厚生労働省がまとめた2019年度の地域保健・健康増進報告によると、受診率は35.2%と低調。ライオンの2023年調査では、受診しない理由として「つわりなどで体調が悪かった」「普段から治療以外で歯科医院に行く習慣がない」「虫歯などの不具合がない」と回答した割合が高かった。
久保田好美さん
ライオン歯科衛生研究所の歯科衛生士、久保田好美さんは「妊娠中に歯科を受診するハードルが高いと感じる人もいるかもしれない」と述べた上で、受診を促す方策として①体調が落ち着く安定期(妊娠5か月ごろ)になったら早めに受診する②妊娠前から歯科で予防処置を受ける習慣を付ける③口内の変化に気付いていない可能性があるため、不具合がなくても受診し確認してもらう―などを挙げている。エックス線や麻酔、薬への不安に関しても「歯科医院では妊娠を考慮しながら診てくれるので、迷っている人はぜひ受診してほしい」と力を込める。
久保田さんが妊娠中の受診を勧めるのは、出産後の多忙な生活も理由の一つだ。ある女性はおおむね2時間おきに授乳やおむつを取り換えるなど、昼夜を問わず育児に追われていたという。そうなると歯科医院へ足を運びづらくなるため、「自分の時間が取りやすい妊娠中に受診しておくことが大切だ」と話している。
◇かかりつけ医を持とう
ライオンの調査では、歯科を受診した妊婦の合わせて7割が「非常に満足」「やや満足」と回答。具体的には「虫歯が見つかり治療できた」「安心して出産を迎えられた」「歯科医に丁寧に診てもらえた」などと評価する声があった。受診をめぐる不安が解消されれば歯科健診を受けたいと考える人は多い。
鈴木准教授は、妊娠期の歯科健診の利点に関し「口腔内の疾患の早期診断・対応につながり、重症化を避けられる」と力説。併せて、生まれてくる子どもについても医師にさまざまな質問ができるとし、「歯が生える時期や虫歯予防、歯磨きの方法などをぜひ聞いてほしい」と呼び掛ける。その上で、「理想は普段からの定期的な歯科健診。自分だけでなく、赤ちゃんや家族に関して相談できる『かかりつけ医』を持つことが非常に大事だ」と付け加えた。(平満)
(2023/11/17 05:00)
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