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肝硬変患者は交通事故や転倒・骨折など不慮の事故が多いという。これには肝硬変の合併症の一つである肝性脳症の関与が指摘されている。初期段階である不顕性肝性脳症は明らかな症状が少ないので見逃されがちだが、生活の質(QOL)や予後にも影響する。岐阜大学大学院医学系研究科消化器内科学分野の三輪貴生医師は「心配な場合は肝臓専門医を受診してください」と呼び掛けている。
肝性脳症に見られる症状
◇肝硬変患者の約2割
肝硬変は、ウイルス感染や飲酒などで持続的に肝臓が炎症を起こす慢性肝炎が進行して、肝臓が硬くなった状態。肝機能が低下し、アンモニアなどの有害物質が解毒されずに血液中にたまる。「肝性脳症は、脳に達したアンモニアが神経細胞にダメージを与えて起こります」
また、肝臓でつくられるタンパク質であるアルブミンの血中濃度が低くなることも、肝性脳症の発症や悪化に関与する。症状は注意力や判断力の低下、性格の変化、睡眠リズムの乱れ、手の震え(羽ばたき振戦)、昏睡(こんすい)などさまざまだ。
不顕性肝性脳症は、血中アンモニア濃度や、無作為に配置された数字をつなぐナンバーコネクションテストなどの神経機能検査などから診断される。「当院の調査では肝硬変患者の約2割に不顕性肝性脳症が見られました」
また、三輪医師らは肝硬変患者と肝硬変のない人に、落ちてくる棒をつかんでもらう神経機能検査を実施。その結果、肝硬変患者は外からの刺激に対する反応の速度や正確性が低下している点が明らかになった。「肝硬変患者は瞬時の状況判断と、それに対応する素早い行動が苦手になっている様子がうかがえます」。これが不慮の事故が多くなる原因の一つと推察される。
◇リスク知り対策
不顕性肝性脳症は正しい診断と適切な治療で改善が期待できる。特にQOLの低下がある場合や車を運転する肝硬変患者には、神経機能検査の受検が勧められる。しかし、診療体制の制約などから、日本では肝硬変患者への神経機能検査はほとんど実施されていないという。「現在は神経機能の簡易検査(ストループテスト、アニマルネーミングテストなど)の導入が検討されているところです」
治療では、血中アンモニア濃度を下げる、あるいは血清アルブミン値を上げるための栄養療法や薬物療法を行う。肝性脳症の悪化につながる便秘や脱水にも注意する。また、肝硬変自体の進行を防ぐために、「栄養バランスの良い食事、禁酒、適度な運動などを心掛けてください」と三輪医師は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/05/24 05:00)
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